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E231 / E233系-国鉄車両置き換えの主役たち 2016.04.20
JR東日本では、首都圏の通勤形と近郊形の一般形車両について、新しい設計思想のもとに開発した新型車両によって老朽化や陳腐化した国鉄時代の車両を置き換える大事業を2000年前後から行ってきたが、ほぼ終了したものと思われる。新しく主役となる車両には”E”の頭文字がつく形式番号が与えられ、国鉄車両との区別を図った。
首都圏における”Eシリーズ”の一般形車両の現状は以下の通り。
形式 運用開始 車両数 置き換え対象となった形式
E217系 1994 745 113系
E231系 2000 2628 103系・201系・203系・205系・113系・115系
E233系 2006 3197 201系・205系・209系・211系
E235系 2015 11 E231系500番台
E531系 2005 300 403・415系

これらの”E”シリーズのうち、E231系とE233系は首都圏の主要路線で共通に使われる車両であるために、飛びぬけて車両数が多い。E217系は横須賀線(一部東海道線)、E531系は常磐線快速、E235系は山手線に配置されている。ただし、E235系は国鉄車両の置き換えではなく、新型車両への更新である。
ここでは5825両におよぶ大勢力であるE231系とE233系による国鉄車両の置き換えについて整理をしてみた。

E231系
JR東日本が国鉄から引き継いだ車両の置き換えが本格的に始まったのは、2000年にE231系通勤タイプ0番台が中央・総武緩行線に投入されてからで、2000年2月から2001年11月にかけて10両編成40本(400両)が一挙に投入され、三鷹車両センターの103系、201系、205系を置き換えた。その後、常磐快速線・成田線2002年3月~2006年3月(松戸車両センター103系置き換え)、山手線用500番台2002年1月~2005年3月(東京総合車両センター205系置き換え)、地下鉄直通用800番台2003年5月(三鷹車両センター103系・203系置き換え)というように置き換えが進んだ。
近郊タイプでは2000年に宇都宮線、2001年には高崎線に投入されて2004年10月までに665両が小山車両センターに配属され、115系の全車両を置き換えた。さらに2004年には東海道線にも投入されて2006年3月までに590両が投入され、国府津車両センターの113系全車両の置き換えを終了した。
以上のようにして旧車両を置き換えた結果、2015年時点でE231系は2628両という大量の車両が運用されている。
番台区分 路線名 置き換え対象 所属 運用開始
通勤タイプ 0番台 中央・総武緩行線 103系・201系・205系 三鷹車両センター 2000.02
常磐快速・成田線 103系 松戸車両センター 2002.03
500番台 山手線 205系 東京総合車両センター 2002.01
800番台 地下鉄東西線直通 103系・203系 三鷹車両センター 2003.05
近郊タイプ 宇都宮線・高崎線 115系 小山車両センター 2000.06
東海道線 113系 国府津車両センター 2004.10

このときの旧車両の置き換えにおいて個人的に意外に思ったのは、中央線快速にE231系は配属されず、201系が残されたことと、山手線の205系が置き換えられて新車両のE231系、しかも外観スタイルの異なる専用車両(500番台)が登場したことだった。
国鉄時代には最新の車両はまず混雑の激しい中央線に投入されるのが常だった。101系と201系はいずれも中央線で走り出した。だからE231系のときも当然中央線に投入されるだろうと思っていたのである。中央線快速の201系はその後も使い続けられ、営業運行が終了したのは2010年10月のことだった。結局1979年8月の運用開始以来31年間も走り続けたのである。
一方、山手線で使われていた205系はまだ比較的新しく、置き換えるには早いうえに、専用の車両というのが意外だったが、山手線は東京を代表する路線のうえ、抜群の稼ぎ頭なのでJR東日本は特別扱いしたのだろう。さらに、それから13年経過した2015年には早くも山手線用の新型車両が登場したのだ。それはE233系ではなく、その先の次世代型のE235系である。つまり、山手線には他線とは違った独自の電車が投入されるようになったように見えるのだ。JR東日本は明らかに山手線を重視(贔屓?)していることがわかる。2020年のオリンピックも念頭に山手線を東京の顔として位置づけたいのかもしれない。現在E235系はすでに1編成が山手線で営業運用中だが、今後増備が始まるのだろう。押し出される500番台は205系のときと同じように他路線に回されるのだろう。すでに1編成が中央・総武緩行線に移ったという。


0番台
中央・総武緩行線
(西荻窪駅)

500番台
山手線
(恵比寿駅)

800番台
東京メトロ東西線直通
(中野駅)

近郊形
東海道線・宇都宮線・高崎線・湘南新宿ライン・上野東京ライン
(武蔵小杉駅)
E233系
E231系の配備が終了したのに続いて、さらに残された国鉄車両を一掃する大規模な置き換え作戦が2006年から始まった。それはE231系のときをはるかに上回る大量の車両の製造・配備が急速に進められたのである。それがE233系である。
置き換えの対象は以下の通りだが、E233系では路線別に番台区分を決めており、通勤形と近郊形という分類はしていない。下表では3000番台が近郊形に相当する。

番台区分 路線名 置き換え対象 運用開始
0番台 中央線快速・青梅線・五日市線 201系 2006.12
1000番台 京浜東北・根岸線 209系 (民営化後に開発された車両) 2007.12
2000番台 常磐緩行線・地下鉄直通 203系・207系900番台 2009.09
3000番台 東海道線・宇都宮線・高崎線 211系 2008.03
5000番台 京葉線 201系・205系・209系500番台 2010.07
6000番台 横浜線 205系 2014.02
7000番台 埼京線 205系 2013.06
8000番台 南武線 205系・205系1200番台・209系0番台・2200番台 2014.10

E233系電車は2006年に中央快速線に登場して以来、首都圏主要各線に急速に導入が進み、2016年現在3197両の大世帯となっている。これは同一系列の配備両数としては国鉄分割民営化後のJRグループでは最大である。
番台区分 所属 車両数 編成本数 置き換え完了
0番台 豊田車両センター 688 10両42本・6+4両17本・6両11本・4両8本 2008.02
1000番台 さいたま車両センター 830 10両83本 2010.10
2000番台 松戸車両センター 180 10両18本 2011.09
3000番台 国府津・小山車両センター 515 10両33本・5両37本 2014.03
5000番台 京葉車両センター 240 10両20本・6+4両4本 2011.07
6000番台 鎌倉車両センター 224 8両28本 2014.08
7000番台 川越車両センター 310 10両31本 2014.01
8000番台 中原電車区 210 6両35本 2016.01

0番台
中央線快速・青梅線・五日市線
(西荻窪駅)

1000番台
京浜東北線・根岸線
(新子安駅)

3000番台
東海道線・宇都宮線・高崎線・湘南新宿ライン・上野東京ライン
E231系近郊形とともに、広範な運用がされている。湘南新宿ラインと上野東京ラインによって200km超の長距離列車も多い。
(東京駅)

E231系(左)との連結運転も行われる。国府津車両センター所属車
(品川駅)

5000番台
京葉線
(新木場駅)

6000番台
横浜線・根岸線
(東神奈川駅)


誤乗防止のためのエンブレム?

7000番台
埼京線
東京臨海高速りんかい線と相互直通運転をしている。
(大崎駅)

8000番台
南武線
(尻手駅)


南武線PRのエンブレム?
その他の”E”シリーズ一般形車両

E217系

横須賀線・総武快速線中心に総武本線、成田線、鹿島線、内房線、外房線など多方面に運用されている。
(北鎌倉)

E531系

常磐線快速用
交直両用近郊形車両で、現在は上野東京ライン経由で特別快速として品川駅まで足を延ばしている。
(取手駅)

E235系


山手線用の新型車両。
異彩を放つ正面デザインで登場。
今後数年間で現在のE231系500番台全車両を置き換える。
(恵比寿駅)
このようにJR東日本では、およそ20年の間に6800両近くの車両を新造して国鉄車両を淘汰してきた。ならすと年間340両の新車両を投入してきたことになる。一気呵成に旧型車両を置き換えてきたことがわかる。ここしばらくは一般型電車はE231系とE233系の天下が続くだろう。それにしても電車1両の値段は1億から1.5億というから、JR東日本の資金力はものすごいものがある。分割民営化により、国鉄時代末期のあの大赤字から一転して好業績を叩き出すようになった結果だ。JR東海にいたっては2兆円を超える総工費を自前で出してリニア新幹線を建設しつつある。分割民営化は効果てきめんだったのだ。
首都圏主要路線では”E”シリーズに統一されたが、一方で周辺部の路線にはまだ旧型車両が残存する。
路線名 形式 車両数 所属
武蔵野線 205系(0・5000番台)
209系(500番台)
336
34
京葉車両センター
相模線 205系(500番台) 52 国府津車両センター
八高線 209系(3000番台)
209系(3100番台)
205系(0・3000番台)
16
8
30
川越車両センター
南部支線 205系(1000番台) 6 中原電車区
鶴見線 205系(1100番台) 27
相模線の500番台を除く205系は山手線からの、209系は京浜東北線からの転出車を改造したもの。

205系5000番台
武蔵野線

多くの列車は京葉線に乗り入れて東京駅まで運転される。
(新木場駅)

205系500番台
相模線

1991年3月の全線電化を機に投入された同線独自仕様の車両。4両編成。かれこれ25年になるので、置き換えの計画があるらしい。
橋本駅から横浜線に乗り入れて八王子駅まで運転される列車もある。
(橋本駅)

209系3000番台
八高線

八王子駅から高麗川駅までは電化されていて、川越線経由で川越駅まで運転される。高麗川駅から先は非電化であるので、気動車による列車が高崎駅まで直通している。
(多摩川橋梁付近)

205系1100番台
鶴見線

鶴見駅から扇町駅までの本線のほか、浅野駅から分岐して海芝浜駅までの支線および武蔵白石駅から分岐して大川駅までの支線からなる。
(鶴見駅)
置き換えられた主な車両

113系

近郊形として1963-1982年にかけて2977両が製造され、本州各地の温暖・平坦地区で運用された。首都圏では東海道本線、横須賀線、総武快速線などで活躍した。
(2005・11小田原駅)

201系

中央線快速用として30年以上も走り続けた猛者。
(2007.05西荻窪駅)

201系は1018両製造され、中央線快速、中央・総武緩行線、京阪神緩行線に投入されたが、JR東日本では794両が引き継がれ、224両がJR西日本に継承された。

201系

2000年から2008年まで京葉線にも在籍した。
(2008.09京葉線東京駅)

205系

山手線
(2004.01五反田駅)

国鉄最初のステンレス車。山手線からの引退は早く、その後改造されて周辺各線に渡ったものも多い。

205系は国鉄、JRを通して1461両製造され、山手線のほか、横浜線、南武線、埼京線・川越線、中央・総武緩行線、京葉線、武蔵野線および西日本の線区で運用された。

209系

京浜東北線・根岸線
(2004.04品川)

JRになってから最初の”新系列”車両で「重量半分・価格半分・寿命半分」という目標を掲げて登場した。830両が製造され、E233系1000番台の投入により廃車が進んだが、改造されて他線に転用される車両も多い。この系列はその後の”E”シリーズの開発設計の標準となったという。

211系

東海道線・宇都宮線
(2009.05王子)

ステンレス車の近郊形で、国鉄時代・JRを通して製造された。
東海道本線向け:270両(国鉄145両・JR東125両)
東北本線向け(寒冷地仕様):365両(国鉄165両・JR東200両)

鉄道総合サイト:「鉄道少年の成れの果て」