会津への道・2010 2010.11.11
東京から会津若松に行くには新幹線から郡山経由の磐越西線を使うのが時間的にも早いが、浅草から東武-野岩-会津鉄道で行くこともできる。こちらは時間はかかるが、ローカル線情緒たっぷりで山岳線路の絶景を堪能できる魅力あるルートである。4年前に来たときは、じっくりローカル線を味わえなかったので再度の挑戦となった。今回の目玉は会津鉄道の「お座トロ展望」列車である。これはお座敷車両、トロッコ車両、展望車両を連結した3両編成の列車で、快速扱いで運転される。これに乗るには整理券(300円)が必要で、乗車日1か月前から販売される。
浅草からは東武特急スペーシアで鬼怒川温泉駅まで行き、ここで会津鉄道の「AIZUマウントエクスプレス」という快速列車に乗り継ぎ、会津田島で「お座トロ展望列車」に乗り換えるのである。
「AIZUマウントエクスプレス」は会津鉄道が運行する列車だが、東武鉄道鬼怒川線の鬼怒川温泉駅から野岩(やがん)鉄道会津鬼怒川線を通ってそのまま会津鉄道へ、そしてさらにJR東日本の会津若松駅まで、4社の線路をまたにかけて走る。

野岩鉄道
野岩鉄道は栃木県の新藤原駅と福島県の会津高原尾瀬口駅間30.7kmをつなぐ、会津鬼怒川線をもつ第三セクターの鉄道会社で、「野岩」とは栃木県の旧国名である「下野国」と、福島県会津地方の旧国名の「岩代国」から一字ずつをとってつけたものという。所有する車両は電車3編成6両だけで、野岩鉄道線を走る車両は東武鉄道と会津鉄道からの乗り入れ車のほうがが多いというユニークな鉄道である。全線電化の単線路線。

会津鬼怒川線の湯西川温泉駅はトンネルのなかにあり、そこを出るとすぐに五十里湖(いかりこ)鉄橋を渡る。そして鉄橋の先にはまたトンネルがある。このような風景がずっと続く。
会津鉄道
会津鉄道は旧国鉄の会津線で、国鉄民営化にあたって制定された国鉄再建法により、特定地方交通線(不採算路線のため廃止か、別の事業体に引き継ぐかを選択する)に指定された。そのため、福島県をはじめ地元自治体、銀行などが出資する第三セクターの会津鉄道株式会社を設立し、1987年にJR東日本会津線を転換して会津鉄道会津線となった。会津線は西若松-会津高原尾瀬口間57.4kmの路線である。全線単線で、会津高原尾瀬口と会津田島間は電化されており、そのさき西若松までは非電化となっている。
会津田島駅
会津田島駅は車両基地がある中心的な駅。この駅から先(西若松方面)は非電化となるので浅草方面から来た電車はここで終点となる。お座トロ展望列車はここから会津若松に向けて運転される。
立派な駅舎と駅前広場だが、奇妙なものが鎮座している。例の「ふるさと創生事業」のなれの果てだ。モニュメントの中は物置となっていた。
会津鉄道の車両

「AIZUマウントエクスプレス」に使われるAT750形(左右)とAT500形気動車

AT500形 「ふるさと列車」という愛称だが、福島県出身の野口英世の肖像が描かれた新千円札が発行されたのを記念したラッピングが施されている。車体全体に描かれた文字は英世の母親が書いた手紙の文面という。

同じく新千円札発行記念車両のAT500形。 磐梯山を背に野口親子の肖像があしらわれている。

唯一の電車 6050系 2両編成。東武鉄道の6050系と同型(塗装も同じ)で、区別するために200番台の車両番号がつけられている。ちなみに野岩鉄道も6050系を3編成所有するが、こちらの番号は100番台である。
この電車は浅草行きの区間快速だが、途中の新藤原駅と下今市駅で2両ずつが増結されて最終的に6両編成となって浅草に向かう。

AT400形 展望車 会津若松方面行きの「お座トロ展望列車」先頭車となる。JR東日本のキハ40系からの改造車。正面右下に「宝くじ号」とあるとおり、事業仕分けでたたかれている”日本宝くじ協会”からの寄贈車両。左下には公募によってつけられたという「風覧望(ふうらんぼう)」という愛称が書いてある。また、「お座トロ展望列車」というのは編成としての愛称で列車としては「会津浪漫号」というのだそうだ。いろいろと名前をつけるのが好きらしい。
右側に停車している車両はAT650形で、「AIZU尾瀬エクスプレス号」として運用される。このAT-652号も宝くじ号だということだ。日本宝くじ協会もこういうところにお金を使うのは間違っていない。

前面展望・車窓風景

いよいよ展望車に乗り込んで、かぶりつき開始!車両の前部はハイデッカーになっていて見晴らしが良い。最前部には一段降りると運転席の隣にベンチシートがあって自由に使用できるので前面展望を楽しめる。この日の乗客は我々3人だけでまさに独占状態。途中で他の車両から若い女性2人がかぶりつきにやってきて大喜びしていた。

以下、田島高校前駅付近から湯野上温泉駅あたりまでのかぶりつき画像。(会津下郷駅までの画像はムービーからのスナップショットのため、画質が落ちているのは御容赦)

非電化路線なので架線柱がなく見晴らしは良い。

会津長野駅を通過。

黄葉の林に分け入る。

谷にかかる鉄橋を渡る。

養鱒(ようそん)公園駅通過。

この先、勾配が25‰の長い下り坂になる。

長い下り坂も終わって再び平地となる。

ふるさと公園駅通過。

阿賀川(大川)を渡る。

会津下郷駅に接近。

会津下郷駅に到着、停車。
右に見える車両は2002年に名古屋鉄道から購入したキハ8500系で、「AIZUマウントエクスプレス」に使われていたが、2010年5月30日に運用を終了した。いずれ廃車になるのだろう。

湯野上温泉駅に停車。この駅は日本で唯一のカヤ葺き屋根の駅舎。

トンネルを抜けると鉄橋を渡り、またトンネルにはいる。鉄橋の手前に”風”の注意標識あり。強風が吹くのだろう。

これにて”かぶりつき”は終了。

塔のヘつり駅の出口にある雑木林。こけしは会津でも名産。

大川ダムのダム湖 若郷湖の深沢橋梁 芦ノ牧南駅付近
芦ノ牧温泉駅にもネコの駅長がいる。”ばす駅長”というらしいが、このときはお寝み中だった。

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鉄道総合ページ「鉄道少年のなれの果て」