井川線

井川線は千頭駅を出るとすぐに急坂となり、大井川がはるか下のほうに離れて行く。千頭から井川に向かって本格的な登山鉄道となるのだ。そのための列車編成は千頭側にディーゼル機関車がつき、井川側の客車3〜5両を押し上げる形となる。井川側の先頭客車には運転台があって運転士が列車全体を制御する。復路はそのままディーゼル機関車が先頭となって牽引し、下り勾配区間では抑速ブレーキとして機能する。これもプッシュプル運転の一種である。アプト区間ではアプト式電気機関車がさらに千頭側に連結されてディーゼル機関車もろともミニ列車を押上げ、「長島ダム」駅で切り離される。そして、千頭方面行きの列車に対しても同じように千頭側に電気機関車が連結されて先頭にたち、抑速ブレーキとして「アプトいちしろ駅」までの急坂を下るのである。

井川線の軌間は1067mmだが、ほかのダム建設工事鉄道や森林鉄道に比べて広いので安心感はある。先見の明があったといえよう。因みに黒部峡谷鉄道は762mmでナローゲージと呼ばれる軌間を採用している。


DD20形ディーゼル機関車と客車。 井川駅
井川線の車両寸法は建築限界の制約から非常に小さい。
機関車の寸法は、長さ8,700×幅1,848×高さ2,700(mm)
客車スロフ306号車内
中央両側にステップつきの出入り口があるが、ウッカリすると頭をぶつけるくらいに小型である。

アプト式電気機関車ED90形 3編成が在籍する。 アプトいちしろ
アプトいちしろ駅と長島ダム駅間で補機として活躍する。レールの間にラックレールが見える。
井川線の建築限界から車体幅が極端に狭く、いわゆるウマヅラである。長さ14020×幅2060×高さ3860(mm)

ED90機関車は2軸台車2台の4軸動輪で、それぞれの台車にはアプト用の歯車装置を内包している。そのため、全体で動力用モーター4基と歯車駆動用モーター2基を搭載している。
ED90の足まわり 
よく見ると、台車の上にモーターが3基搭載されている。おそらく台車内にはアプトの歯車装置があるので、モーターが収まらず、上に載せているものと思われる。そして、台車の中央部分、車軸の間に歯車装置らしきものが見える。いずれにしても特殊な台車である。
ED90の連結風景
アプトいちしろ駅
雨の中、乗客は列車を降りて見物する。
長島ダム駅での連結作業
電気機関車と手前のディーゼル機関車とのサイズの違いがよくわかる。

寸又峡温泉へのバスからアプトいちしろ駅を眼下に望む。

90‰の急坂を行く  アプトいちしろ−長島ダム

沿線の眺め

大井川(左)と寸又川(右)との合流 土本−川根間
大井川の清流に寸又川の濁流が流れ込み、この地点から大井川は河口までずっと濁流が続く。かなり衝撃的な眺めだ。同じように上流で大雨が降っているのに大井川が濁らないのは上流のダムのおかげと思われる。
ところどころ開けた土地では茶畑が広がる。ここは川根茶の産地。
奥泉−川根小山間
峡谷にかかる高さ70mの泉大橋 
奥泉−アプトいちしろ間
長島ダム
平成14年に完成した多目的ダム
堤高109m、堤頂長308m
放水路の上にかかるつり橋は最大放水のときには水しぶきのなかに隠れるとか。
長島ダムのダム湖にかかる長さ474m、高さ70mの鉄橋(レインボーブリッジ)を渡る。
橋の中間には奥大井湖上駅があって下車できる。ただし道路などはついていないので次の列車を待つか、鉄橋の線路際の歩道を歩いて隣の接岨峡(せっそきょう)温泉駅に行くしかない。高所恐怖症の向きには無理かもしれないが。。。
因みに東京のレインボーブリッジより早い命名であることをしきりに強調していた。
接岨峡温泉駅ですれ違い交換
車掌は傘をさして発車合図する。
私鉄の鉄道橋としては日本一の高さ(100m)を誇る関の沢鉄橋。列車は徐行してくれるが、車内からはなかなかそれらしく撮れない。

井川ダム
中部電力の発電専用ダム
1957年(昭和32年)完成
堤高103m、堤頂長243mの規模を持つ。晴れていれば南アルプスの山が望めるそうで、まことに残念!
井川駅
大井川鐵道全線65kmの終点。
山のなかの終着駅でダムに行く以外にはなにもない。
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