紀州鉄道
紀州鉄道は和歌山県御坊市に路線を持つ中小私鉄で、路線は御坊駅〜西御坊駅間2.7kmの「紀州鉄道線」のみである。途中駅は3駅、全線単線、非電化。御坊駅でJR紀勢本線(きのくに線)に接続する。
歴史は古く、昭和3年(1928)に御坊臨港鉄道として開業した。しかし、ご多分にもれず業績不振から廃止に追い込まれ、1972年に東京の磐梯鉄道不動産という会社に買収され、翌年「紀州鉄道」に社名を改称した。本業は不動産、ホテル業といわれる。同社はこれまで、全国一短い鉄道線をもつミニ私鉄だったが、最近千葉県の芝山鉄道(1km)にその座を譲ってしまった。(2005.10)


御坊駅に進入するキハ603。かつて大分交通耶馬渓線(昭和50年廃線)を走っていた昭和35年製の気動車。もう1台キハ604があるようだが、いずれにしても古つわものがよくがんばっている。


御坊駅0番線に発着する。1日24本(毎時2本)が運転されているという。このときは日曜日の朝ということもあって、このキハ603は10人ほどの乗客を降ろしたあと、乗客なしで西御坊に帰っていった。


丸みをおびたHゴム枠の羽目殺し窓を持つ、この窓の形式をバス窓というが、昔は大手私鉄の車両でもよく見かけた。


市役所前駅から終点西御坊駅に車両が止まっているのが見える。デコボコの線路がなんともローカル色十分である。


市役所前駅

紀州鉄道
JR紀勢本線は三重県亀山市の亀山駅から熊野市駅、新宮駅、紀伊田辺駅を経由して和歌山県和歌山市の和歌山市駅まで紀伊半島の海沿いに走り、JR東海とJR西日本にまたがる鉄道路線である。そのうち和歌山と新宮の間は「きのくに線」と称している。
路線データ:
・全長(亀山〜和歌山市) 384.2km
 亀山〜新宮間(JR東海) 180.2km
 新宮〜和歌山市間(JR西日本) 204.0km
・駅数 96駅(JR東海40駅、JR西日本56駅、起終点駅含む、両社の分界駅は新宮駅)
・軌間 1067mm
・複線区間 紀伊田辺〜和歌山間
・電化区間 新宮〜和歌山間(直流1500V)、亀山〜新宮間は非電化

いまから40数年前、東京から串本まで行ったことがある。東京(東海道本線)〜大阪(城東線;いまの大阪環状線)〜天王寺(阪和線)〜和歌山(紀勢西線)〜串本、というルートだった。紀勢本線はまだ東西に分断されていて、西線は紀伊木本(いまの熊野市)まで、東線は尾鷲までで、その間は鉄道がなかった。天王寺発の列車は和歌山までは電化されていて電気機関車が引っ張ったが、和歌山から先は当然蒸気機関車が引っ張った。串本までは4,5時間かかったと思うが、なにしろトンネルの多い路線で、そのたびに窓を閉めるが煙は容赦なくはいってきて、薄暗い室内燈がかすんでくる。煤煙が目にはいって痛いやら、むせるやらで、まったく難行苦行の挙句にやっと到着するが、顔も衣服も煤で真っ黒になって駅に降り立つのである。それでも山あり、川あり、海ありの景色を見ながらのんびり行く汽車の旅は楽しかった。いま、空調完備で高速の電車特急に乗るとまさに隔世の感がある。


御坊駅に到着した特急「スーパくろしお」京都行き 381系 
京都〜新宮間を東海道線、大阪環状線、阪和線、きのくに線を通ってむすぶ。
381系は振り子式の車両で1978年に紀勢本線に投入された。振り子式の車両とは、カーブ通過時に車体を傾けることにより、通過速度の向上と乗り心地の改善を図った車両のこと。紀勢本線や、同じように急カーブが多い中央西線、篠ノ井線、伯備線、山陰線などで使われている。実際乗ってみるとカーブ通過時にほとんど速度を落とさずに走行するが、車体はかなり傾くので、車内の荷物の置き方や、移動には注意が必要である。


御坊駅で特急「スーパーくろしお」の退避をする和歌山行き普通列車113系