東急目黒線 日吉延伸

日吉駅に到着した急行電車 東京メトロ9000系(2008.06.23)

2008年6月22日、東急目黒線が日吉まで延伸開業した。これにより、1988年着工以来続けられてきた東横線複々線化事業がようやく完了したことになる。その間じつに20年!日ごろ利用している者にとってとにかく長い工事だった。

この20年間でもっとも大きく変貌したのは目蒲線である。
そもそも東横線複々線化とは、東横線の混雑を緩和するために目蒲線をバイパスとして再構築する事業である。そのために、田園調布駅から目黒駅までの目蒲線を8両編成の列車が走れるように改良し、目黒駅から地下鉄を経由して都心部乗り入れの計画がたてられた。一方、田園調布駅−多摩川駅間はすでに東横、目蒲両線は並走していて複々線だったので、そのまま多摩川を越えて目蒲線の線路を日吉駅まで延ばすことになったのである。これによって日吉駅−田園調布駅間は文字どおり複々線となるのだが、広い目で見ればその先、行き着くところはJR山手線の渋谷駅と目黒駅なので、実質的に東横線の複々線と見られなくもない。これに伴い、目蒲線は多摩川駅で分断され、目黒駅−多摩川間は目黒線、多摩川−蒲田間は東急多摩川線(西武多摩川線と区別するため”東急”をつけたとされる)となった。

東急電鉄のホームページによれば、東横線複々線化事業はいくつかの工事に分かれていて、1988年の日吉駅改良工事(1991年完成)から始まって、田園調布−多摩川間改良工事(1997.06)、多摩川橋梁架け替え・増設工事(1997.12)、目黒駅改良工事(1998.09)、大岡山駅改良工事(1998.12)、新丸子−武蔵小杉間線増工事(2000.09)、洗足−奥沢間施設改良工事(2000.12)そして今回の武蔵小杉−日吉間線増工事(2008.06)で完成をみたのである。しかもその間に目黒線(目黒付近−洗足付近間)の立体交差事業(1995〜2006)の工事が併行しており、まさに工事の連続だったのである。

日吉から始まって日吉で終わるというのもなにかの符合かもしれないが、ようやく完成したことはまずはめでたい。これで目黒線は目黒駅−日吉駅間11.9キロ、駅数13駅となった。急行運転も行われており、南北線や三田線で都心部への往き来には至極便利な路線である。当初は空いていて快適だったが最近は混雑するようになってきた。東横線のバイパス効果が現われているのかもしれない。

今回の開業で興味の的は武蔵小杉−元住吉間の2層化された線路である。元住吉駅は車両基地があるために、地上駅だったが、改良工事で車庫の上に高架駅が作られた。武蔵小杉は高架駅なのでその間の線路も高架化されたが、用地買収の関係で複々線にはできず、従来の線路の上にかぶせて2層化し、高架部分を東横線が、地上部分は目黒線が使うことになったのである。

実際に目黒線の電車に乗ってみると、武蔵小杉からしばらく東横線と並走したあと坂を下り始めて東横線の線路の下にはいる。そのまま直線区間を進むと踏切があり、その先で車両基地への連絡線を分岐して、上り坂となって東横線と同じレベルで元住吉駅にはいる。

したがって、この線路の状態を見るには踏切まで行くのが最善と考えて、元住吉駅から線路沿いの道を踏切まで行ってみた。この踏切は「武蔵小杉第1踏切道」といわれるが、交差する道路は中原街道への連絡道路で、かなり交通量があり踏切が閉まるたびにクルマの列ができる。もともとこういう状態だったのが、東横線高架化後は車両基地への入出庫電車だけが通るので踏切の開いている時間は長く、渋滞は少なかったものの目黒線が通るようになって、またもとの状態に戻ったのだろう。しかし、現場には道路の地下化計画の看板が立っていて周辺も道路拡幅用地が確保されているので、間もなく工事が始まるものと見られる。これが完成すればこのさき日吉までの本線上は踏切がゼロになるが、元住吉駅入口付近には車庫線の踏切が残っている。電車の往来は頻繁ではないがこれもなくすのだろうか。踏切をはさんで商店街が連なっているので、道路を地下化するのも難しいし、車庫線を地下化するのも難しそうで、はたしてどうなるのか。(2008.06.29)



武蔵小杉第1踏切道
目黒線電車が通過中。上の高架を東横線が走る。


道路地下化工事を知らせる看板。


目黒線線路
武蔵小杉方向(上り)を見る(左は上り、右が下り)。もともと東横線が走っていたが、レールやコンクリート枕木、バラストなど路盤は新しく敷設されたようだ。このさきは工事中で、徐行指示の臨時信号(左下の黄色い円板)が掲げられているが、徐行といってもなんと95km/h制限!


通過する上り目黒方面行き電車。  東急5080系


目黒線線路
元住吉方向(下り)を見る。上下線とも車両基地への連絡線が分岐している。左は入庫線、右は出庫線。本線はこのさき坂を上って元住吉駅にはいる。


下り日吉行き電車。 埼玉高速鉄道2000系


元住吉駅が地上駅だったときに2面4線のホームがあったところ。いまは入出庫電車が通る。  元住吉駅出入口付近の踏切から写す。


元住吉駅を出て地上線に下りて行く目黒方面行き電車。 東急3000系

 

元住吉駅ホーム 日吉方向を見る。 2面6線構造で、内側2線は目黒線、外側2線は東横線。さらに外側には東横線の急行通過線がある。


日吉駅引き上げ線で待機する目黒線電車(都営6300形(左)・東急5080系(中))と進入してくる東横線上り急行電車(東急9000系)。  


発車を待つ急行西高島平行き 東急5080系 5189F  日吉駅

関連ページ:
・鉄道総合ページ「鉄道少年のなれの果て」
・目黒線 不動前-洗足間地下線開通
・東横線「元住吉駅」