2006年7月2日、東急目黒線の不動前駅〜洗足駅間の連続立体交差工事による地下線約2.4kmが開通した。これに伴い途中の武蔵小山駅と西小山駅が地下駅となった。この区間には大小合わせて16ヵ所の踏切があり、東急線のなかでも踏み切りの多い区間だったが、この工事によって一挙に解消した。1995年11月着工以来11年の歳月を要したが、このあたりは線路の両側には民家が迫り、非常に狭い現場で線路を右に左に移動させながらの、見るからに難工事を感じさせるものであった。東急電鉄では同様な工事を東急池上線の旗の台駅と戸越銀座駅間の連続立体交差工事として、1989年3月に完成させているが、ここでも同じように民家にはさまれた狭い工事現場の線路上を電車がゴトゴトと徐行していたのを思い出す。

そんな線路の下ではトンネルが掘られ、駅が造られていたとは電車に乗っている限りではほとんどわからない。高架線であれば別だが、地下線は工事中になんとか様子を見ようとしても、だいたいが見えないようになっている。多くの工事が終電後に行われるし、工事現場には近づけないからである。ところが、ある日一夜にしてベールが取り払われて地下線が姿を現わす。線路の切り替えのときである。いままで地上を走っていた線路が消えて地下の線路に変わるのである。それはまるでマジックみたいに、実に見事に変身する。そしてその後、電車は当たり前のように地下線にはいってゆくのである。
このような切り替え工事はだいたいが終電を待って始まり、始発までの短かい時間内で行われるが、長い年月をかけてきた最後の仕上げである。それだけに一番電車が無事に通過したときの工事関係者の喜びはひとしおだろう。

この目黒線の地下線切り替えも7月2日の終電から初電のわずか4時間ほどの間に行われた。切り替え地点は、洗足駅目黒寄りと不動前駅武蔵小杉寄りの地点である。いずれも駅ホームから見えるところで、その変貌ぶりをよく観察できる。深夜の切り替え工事の様子を見るために多くの鉄道ファンが押しかけたと思われるが、さすがにそれは御免蒙って、7月2日の午前中に完成したばかりの地下線を洗足から不動前までゆっくり見てきた。また、それに先立って6月6日には、もう二度と見られない地上の様子を記録してきたので、あわせて以下に速報する。今回の切り替えによってとりあえず電車は地下を走るようになったが、地上線路の撤去や駅周辺の整備はこれからであり、まだしばらく工事は続くと思われる。

それにしても連続立体交差にするのは結構だが、高架にしろ地下にしろ、こうして地平を走る電車がどんどん減っていくのは寂しい限りである。(2006.07.04)

2006年6月6日
洗足駅
2006年7月2日
上りホームから目黒方向を見る。洗足駅はもともと地下駅なので(下記注)、上り勾配で地表面に出る。線路の赤い部分(仮桁)は上にあるやぐら(巨大なフックがぶら下がっている)で引き上げられて、その下にすでに敷設されている線路に置き換わる。
上りホームから目黒方向を望む。しばらく掘割りを通ってその後トンネルにはいる。その先は下り勾配となる。上にかぶさっている赤い桁は引き上げられたもとの線路。このあと撤去されて掘割りになるのだろう。


仮桁(人が立っているところ)にもフックが取り付けられて、吊り上げの準備がすでにできている。
下りホームから目黒方向を望む。すっかり勾配がなくなっている。

下り武蔵小杉ゆき電車が到着
下りホームから大岡山方向を見る。
西小山駅

下り方向を望む。洗足駅のトンネルが見える。


上り線の洗足方向を臨む。トンネルの入り口が見える。


仮ホームの様子。相当に狭い。

新装なった地下ホーム(下り側)

目黒方面に向かう上り電車

下り線側から目黒方向を臨む

下り電車の進入

上り電車の進入

西小山駅入り口

入り口はまだバラック状態
武蔵小山駅

下り方向を望む。先に見える踏み切りは都道補助26号線で交通量が多く、この工事による効果が最も大きいと思われる。

下り方向を見る。この駅は優等列車の追い越しができるようにホーム2面に4線構造となっている。上下線の分岐ポイントが見える。

バラック作りの仮ホーム

現在、4線のうち内側の2線が使用されている。

目黒方向を望む。線路際まで密集したこのような風景は昔から変わらない。

外側ホームはホームゲートもまだないが、9月下旬の急行運転開始時までには整備されるものと思われる。

下り電車の進入

新ホームに停車中の下り電車

駅入り口(西口)。先の細い道を通って構内にはいる。


新設された西口。まだ駅舎はできていない。東口もまだオープンしていない。
不動前駅

武蔵小山方向を望む。長い上り勾配が続いている。

見事に平坦になった線路とトンネル入り口

発車した下り電車が長い坂を上ってゆく

下り電車がトンネルに向かう。

上り勾配の最上部踏み切りから不動前駅を望む。

同上

上りホームから目黒方向を望む。

上り電車の進入。
(注)
洗足駅はむかしは地平にあって、環状七号線ができた当初、目蒲線はこの洗足駅付近で平面交差(踏み切り)していた。同様に近くを走る大井町線、池上線も環状七号線と平面交差していた。このため、すべてを立体交差とすべく、大規模な工事が行われ、大井町線は高架線、目蒲線と池上線は地下線となって目蒲線洗足駅と、池上線長原駅が地下化されたのである。

目黒線地下線切り替え工事の詳細(東急電鉄) https://www.tokyu.co.jp/contents_index/guide/pdf/060424.pdf

鉄道総合ページ:「鉄道少年のなれの果て」