真岡鐵道 2010.01.20
真岡(もおか)鐵道は茨城県の下館駅と栃木県の茂木(もてぎ)駅を結ぶ全長41.9kmの単線・非電化の路線である。この鉄道は蒸気機関車を保有し定期的に走らせていることで知られている。”SLもおか”列車は土休日に運転されているが、毎年1月にC11形とC12形蒸気機関車をつないで客車をひっぱる重連運転のイベントがある。ことし(2010)は1月17日に下館-茂木間の1往復が行われるときいたので出かけてみた。起点である下館までは我が家からゆうに2時間半はかかる。午前中の下館発の便にはとうてい無理なので、茂木からの折り返し便を見ることにした。とりあえず終点の茂木駅まで行って待機する機関車を撮り、一足先にもどってどこか途中で走行するシーンを撮ろうというプランででかけた。
秋葉原から、つくばエクスプレスで守谷まで行き、そこから関東鉄道常総線に乗り換えて下館駅に着いた。下館駅はJR水戸線と関東鉄道常総線、真岡鐵道の共同駅となっているので乗り換えは至極便利だ。
下館駅に停車中の、なんとも個性的な塗装の”モオカ14形”気動車。”Moka Railway”のロゴが貼ってある。
1両単行で茂木に向かう。所要時間は1時間5分、運賃は1000円である。ワンマン運転で、駅員のいない駅では車内精算する。ダイヤはだいたい1時間に1本の運転で朝夕には2本が運転されるようだ。

下館を発車すると水戸線、常総線と別れるが、常総線をそのまま延長したような形で関東平野の東側をほぼまっすぐ北上する。走り出して車窓から外を眺めていたら案の定、いるいる!鉄橋の側や見通しの良いカーブの側などには大勢のマニアが三脚を立てて待機している。駅のホームにもがんばっている。車内にも一目でそれとわかる御仁が何人もいる。女性もいる。やはり年に一度の重連運転イベントなのでこうして押しかけるのだ。しかも見たところシニアのマニアが多い。私としては大いに気を強くしたが、お互いライバル意識があってか話しかけたりしない。シニアマニアは決まって重装備である。三脚を持ち、リュックを背負い、望遠レンズをつけた高級カメラを持っている。なかにはプロの写真家もいるだろうが、多くはこだわりのアマ写真愛好者なのだろう。こちらはこういう撮影旅行には三脚を使わない主義だし、カメラは一応のレベルのものだが交換レンズも最小限しか持って行かない。いつも軽装備である。パッと撮ってすぐ帰るのがいいのだ。

やがて終点茂木駅に着いた。駅の構内は広く明るい。周りは里山である。
駅の構内にはお目当ての重連編成の機関車がいた。すでに方向転換されていて、大勢のマニアに囲まれている。左手前に転車台の一部が見える。

真岡鐵道が所有する蒸気機関車は、C12形66号機とC11形325号機の2台である。いずれも国鉄時代に製造され、引退後は静態保存されていたのを譲り受けたという。テレビのドラマ撮影に使用されたり(C12 66)、行楽シーズンにJR東日本に貸し出されて只見線や磐越東線を走る(C11 325)など活躍している。
機関車の概要
  C11形  C12形
特徴 国鉄主要支線用に軸重を軽くして開発されたものだが、俊足ぶりが買われて全国の支線で旅客列車牽引用として活躍した。 軸重制限のある簡易線用としてC11形より小型、低コストを狙って設計された。
   
製造期間  1932〜1947 1932〜1947 
製造総数(両)   381  282
全長(mm)  12650  11350
全高(mm) 3900 3900
車軸配置 1-C-2 1-C-1
動輪直径(mm) 1520 1400
総重量(t) 66 50
出力(ps) 610 505
動態保存状況    
( )は製造番号       
5両
真岡鐵道(325)、大井川鐵道(190・227)、JR北海道(101・207)
2両
真岡鐵道(66)、大井川鐵道(164)
   


C12 66機(上)、C11 325機(下)
いずれもタンク式(水と石炭を本体に収容する方式。専用の炭水車をつないでいるものをテンダー式といい、大型機に多い)で、同じようなスタイルだが、車軸配置はC12形が”1-C-1”(3軸の動輪(C形式という)をはさんで前後に1軸ずつ補助輪を配置する形式)。C11形は重量配分を考慮して”1-C-2”である。また、C11形にはデフレクタ(除煙板)が取り付けられている。

C11 325機の後部。ヘッドライトがついているのはバック運転をするため。蒸気機関車は方向転換をするために転車台(ターンテーブル)を必要とするが、その設備がない場合にはバックで客車を牽引することも多い。
”SLもおか”列車で使用される50系客車。JR東日本から譲渡されたもの。
左から”オハフ50 33”、”オハ50 22”、オハ50 11”。 ”オハ”は普通客車、”オハフ”は車掌室つき客車で、JR時代の呼び方をそのまま使っている。

一通り撮り終えたので、つぎは”SLもおか”の復路を走行する場面を撮らなければならないが、先発する各駅停車に乗ってどこかで途中下車して待ち構えようとは考えた。しかし”SLもおか”の後の列車は1時間後である。帰りのことを考えるとちょっと遅すぎるので、結局ここまで乗ってきた列車で折り返し、下館駅まで戻って待つことにした。だが、これが誤算だったのだ。

■下館駅

ホームは3面あり、写真手前から真岡鐵道(1番線)、JR水戸線下り(2番線)共有ホーム、水戸線上り(3、4番線)ホーム、常総線(5、6番線ホーム)である。手前にはモオカ14形が、奥に常総線の気動車が停車している。
JR水戸線の上り列車が発車したところ。水戸線は東北本線小山駅−常磐線友部駅間50.2kmの単線・電化路線。常磐線と同じく、交流(20000V)電化されているが、小山駅周辺は直流(1500V)となっていて手前の小田林駅との間に交直切り替えセクションがある。したがって水戸線の電車は交直両用の415系、501系が使われる。

JR415系 下り列車

JR501系 この列車は常磐線直通の高萩ゆき

■”SLもおか”

そして、待ちに待った”SLもおか”が戻ってきた。
ところがなんと!重連ではなかったのだ!C11325だけで牽引し、最後部からディ−ゼル機関車が推すプッシュプル運転であった。途中の真岡駅で重連運転は打ち切られ、C12 66機を置いて、代わりにディーゼル機関車を連れてきたのだ。
下館駅に堂々進入してくる”SLもおか”。
重連ではなかったが走行するシーンを撮れたので良しとする。重連走行の雄姿はどこかのサイトで拝見することにしよう。

正面からのC11 325 人垣をかいくぐってやっと撮ったもの。

冬の陽は早くも傾いてきている。
 

後ろから押してきたDE10 1535ディーゼル機関車。この機関車もJR東日本から購入したもの。主としてSL列車の回送に使われ、このあとも真岡の車両基地への回送を兼ねて真岡駅までの営業運転となる。この運行では3両の客車のうち最後部客車だけに乗車できるようだ。
この駅には転車台がないので、C11 325機はそのまま後ろ向きで引き返す。汽笛一声、真岡車両基地に向かって夕陽を浴びながら去って行く。

見送るマニアたち。地元の人も・・・
と、いうわけで、ちょっと誤算はあったがはるばるここまで来た甲斐はなんとかあった。そのあと小山に出て東北本線で帰途についたが上野まではほんとに遠かった。
鉄道総合ページ:「鉄道少年のなれの果て」
関東鉄道常総線