成田スカイアクセス
2010.07.18
2010年7月17日、都心から成田空港への新しいアクセスルートが誕生した。新ルートは京成本線日暮里駅と空港第二ビル駅間をこれまでより15分と大幅に短縮する最速36分で結ぶ。これまでのルートは京成本線を通っていたが、京成高砂駅から分岐して相互乗り入れをしている北総鉄道北総線を成田空港まで延長する形で経路を短縮し、そのうえで列車のスピードアップを図るものである。これにより京成本線経由よりも線路は5.2km短くなり、その上を最高速度160km/hで走る新型車両を投入することで実現したのである。

京成上野−京成高砂−成田空港をむすぶ64.1kmの新ルートは「成田新高速鉄道線」と呼ばれることになり、そのうち、京成高砂−成田空港間51.4kmは「成田スカイアクセス」と呼ばれる。この区間はいくつかの鉄道事業体に分かれていてちょっと複雑である。つまり、(京成高砂)−北総鉄道−(小室)−千葉ニュータウン鉄道−(印旛日本医大)−成田高速アクセス−(接続点信号場)−成田空港高速鉄道−(成田空港)のように4事業体が保有する線路をつないだ形になっている。このうち、北総鉄道以外の3社は線路を保有するだけの第3種鉄道事業体である。
全線の列車運行は京成電鉄が第2種鉄道事業(他社の線路を借りて列車を運行する事業形態)として担うことになる。そのうち、北総鉄道はこれまで通り、京成高砂−小室間は第1種(自社線で運行する形態)、小室−印旛日本医大間は第2種として運行する。

今回の成田スカイアクセスの開業によって京成線の列車の運行形態が大きく変わった。まず、成田空港へのルートが京成高砂駅で京成本線経由と成田スカイアクセス線経由に分かれ、特急スカイライナーはすべて成田スカイアクセス経由となって京成本線には走らなくなった。そのかわり京成本線にはシティライナー、イブニングライナーという有料特急が新設された。また、成田スカイアクセス経由ではアクセス特急という無料の特急列車が新設された。このアクセス特急は日中は羽田空港−成田空港、16時以降は上野−成田空港を往復する。
今回の新線開業では、成田空港アクセスに重点を置いた運行形態となっているため、スカイライナーは20〜40分間隔で上下54本/日、アクセス特急は40分間隔で上下52本/日が運転される。このようにかなり充実したダイヤになった。

(京成電鉄ホームページから)

そしてこの開業の目玉はなんといっても新型スカイラーナーの登場である。これまでのAE100形車両に代わってまったく新しく製造された。新AE車は京成電鉄のフラグシップにふさわしく、デザイナーの山本寛斎氏のデザインによる意欲的なスタイルの車両となった。技術面では在来の鉄道では最高速の160km/hで運転するよう設計されている。160km/hでの営業運転はすでに北越急行ほくほく線の約60キロの間で行われており、JR西日本の特急「はくたか」が乗り入れている。
スカイライナーの160km/h運転区間は印旛日本医大−空港第二ビル手前までの約18キロの間だけで、京成高砂−印旛日本医大間は130km/h運転である。上野−京成高砂間の京成本線内ではさらに速度が制限されて最高110km/h運転となる。アクセス特急の場合は成田スカイアクセス内を最高速度120km/hで運転される。

160km/h運転をするには線路や信号設備などで高速運転対応にする必要がある。もともと北総鉄道の線路は急なカーブは少ないが、今回新設された印旛日本医大駅以東の新線部分では高架式のスラブ軌道を採用しているほか、160km/h運転をするためにポイントなども高規格のものが使われている。成田湯川駅から成田空港側は単線になるが、その地点では新幹線でも使われている「38番両開きポイント」というポイントが採用され、160km/hのまま通過できるようにしている。このポイントはY字の形態をしていて単線から複線になるとき(またはその逆)に使われるもので、直線軌道から左右同一の角度で開いて分岐させるものである。分岐の角度が小さければより高速で通過できる。ポイント番号が大きいほど分岐角度が小さくなるという決まりになっている。
また信号設備も在来の列車が走っている区間の信号システムのほか、高速運転用の信号方式を併用するなどの新しい対応を行っている。
日暮里駅
日暮里駅は今回の新ルート開業に備えて大幅に改装された。ホームは高架の2層式となり。階下の0番線ホ−ムは上野行き専用となり、新設の高架ホームは成田方面専用となった。このホームは2面1線で1番ホームはスカイライナー、シティライナーなどの有料特急専用で、2番ホームはその他の一般電車が発着する。このため、1番ホームへは専用の改札を通って行くことになる。成田空港への乗客の大部分がこの日暮里駅から乗車すると考えられるので、実質的なターミナル駅とみなすことができる。
日暮里駅に到着した新型スカイライナー。左側の1番ホームから乗車する。その他の特急や普通電車の乗り降りは2番ホームから。

日暮里駅を発車したスカイライナー  この先空港第二ビル駅までをノンストップで走る。
千住大橋駅

千住大橋駅を通過する、京成本線経由の特急成田空港行き 京成3700形
3700形は京成電鉄の主力車両で1991年から2002年まで増備が続き、132両が製造された。この編成はシリーズ最終の3868編成で2002年製。
青砥駅
青砥駅は京成押上線が分岐する駅で、押上駅で都営浅草線に接続し、さらに泉岳寺駅から京浜急行線に接続する。ホームは複々線が方向別に二層に分かれていて、上り(上野、押上方面)は下層、下り線(高砂、成田方面)は上層となっている。

上り線ホームに並走して入線してくる上野行き(左)と羽田空港行きのアクセス特急。

千葉ニュータウン鉄道所有の9100形  運用は北総鉄道が行っている。

上り線を通過するスカイライナー  かなりスピードを落としている。
京成高砂駅
京成高砂駅は京成本線と成田スカイアクセス線が分岐する要衝駅である。スカイライナー、シティライナーなどの有料特急以外はすべて停車する。平日に停車する列車の本数は、上り線413本、下り線320本の計733本で、これにスカイライナー54本、シティライナー、イブニングライナー23本が通過するので合計810本の列車が通ることになる。そのため2面4線のホームには頻繁に電車がやってくる。隣の青砥駅との間は方向別複々線のままとなっていて、同じ方向に列車が並走するシーンも絶えず見られる。とにかくホームに立っていると、京成線を走る、乗り入れ車を含むすべての電車をチェックすることができる。

並走してくる、アクセス特急(左)と京成本線経由の列車。

京浜急行1000形によるアクセス特急
アクセス特急は最高速度120km/h運転をするため、対応できる車両は京急1000形、同600形と京成3050形に限られている。

3代目スカイライナーとなる新AE形
旧型より格段に洗練されたスタイルだが、京成電鉄の職員が「京成がこんな車両を作れたとは・・・」と感激したというくらいの出来栄えだ。

1990年以来2代目スカイライナーとして活躍してきたAE100形  シティライナーとして再出発した。
8両編成7本が在籍する。

京成3400形
この車両は、実は初代スカイライナーAE形(右)の走行系機器をベースにして新たに全鋼製通勤型車体を載せ換えて改造したものというが、まったく面影を残していない。
現在、8両編成5本が在籍している。都営浅草線、京浜急行線、北総線乗り入れに対応する。





(Wikipediaより)







京成3000形
2002年に登場した「京成グループ標準車体」と呼ばれる車両。グループの北総鉄道や新京成電鉄でも同一構造を採用した車両を保有している。
ステンレス車体のVVVFインバータ制御で、2002年から2008年までに8両編成1本、6両編成24本が製造された。
この編成はシリーズ最終の3025編成で2008年製。
都営浅草線、京浜急行線、北総線への直通に対応する。
北総鉄道7500形
京成グループ標準車体を採用した北総鉄道の自社所有車で3編成が在籍する。

京成3700形
1991年に登場した、京成電鉄初のVVVFインバータ制御車、ステンレス車体。この編成は1994年製の3738編成だが後期製造の車両では前面の外観が変更されている(千住大橋駅の項参照)。3700形は相互乗り入れのすべての路線に対応している。

京成本線経由快速佐倉行き 京成3600形
1982年に登場した古参車両。8両編成の先頭車両が非電動制御車であるため、京浜急行線に乗り入れることはできない。したがって、京成線内と都営浅草線内での運用が主体となっている。
ちなみに、京浜急行電鉄では列車の先頭車両は必ず電動制御車でなくてはならないという決まりがある。これは万一先頭車両が脱線したときに、車体重量が重い電動車ほうが線路を大幅に逸脱する被害が少ないという考えによるものと思われる。このため、京急線に乗り入れる他社の列車にもこの条件がつけられていて、クリアしない車両は乗り入れができないのである。

芝山鉄道3600形 京成電鉄からリースした京成3600形を帯の色などの外観を変更している。8両編成1本のみが在籍する。芝山鉄道は東成田駅と芝山千代田駅間2.2kmだけで、鉄道会社が保有する路線としては日本一短い。東成田駅からは京成車が直通運行しているが日中は4両または6両なので、この3600形は自社線内はあまり走らず、もっぱら上野−成田空港間や高砂−西馬込間を往復しているという変った運行をしている。いずれにしてもレアモノ車両で、ここで遭遇したのはラッキーだった。

都営浅草線からの乗り入れ列車、 北総鉄道直通印旛日本医大行き 都営5300形
印旛日本医大駅
北総鉄道北総線の終点駅だったが、新線開業で途中駅となった。
とはいえ、当駅は北総線の終点であることには変わりはない。都心方面からやってきた、スカイライナーとアクセス特急以外の列車はすべて当駅止まりで折り返しとなる。

以前は「印旛松虫」だったが、近くに日本医大の病院ができたために現在の駅名になったという。「松虫姫」の表示があるが、聖武天皇の娘である不破内親王がライ病を患って、この地の薬師堂に祀られた薬師如来像に平癒を祈願し全快したため、聖武天皇が寺を建立させ「松虫寺」と称したという伝承があり、松虫とは内親王の幼名が「松虫姫」であったことに由来するという。なんとなく違和感あり。

北総鉄道7300形 当駅止まりの電車。
7300形は京成3700形と同一スペックによる自社所有車2編成と京成電鉄からの3700形をリースして塗装変更および改番した1編成がある。

北総鉄道7200形 京成電鉄の3300形からのリース車を北総塗装し、改番したもの。
北総線・京成本線・京成押上線・都営浅草線・京浜急行線の5線を渡り歩いて羽田空港を目指す。

駅ホームの成田空港側の端は建物があるため見通しがよくないが、わずかな隙間から撮った上りスカイライナーの通過。
風圧を避けるため、しゃがみこんで、手すりにつかまってシャッターを切った。
反対側(高砂方面)のホーム端は広々と見通し良好。
スカイライナー同士のすれ違いを激撮!

この地点では時速130kmで走行している。
成田湯川駅
新線上で唯一の途中駅。JR成田線と交差していて将来的には接続するというが、まだ駅はない。
この駅はアクセス特急のみが停車するが、スカイライナーが160km/hで疾走する様子を間近に見られる貴重なスポットである。

駅の構造は新幹線と同じ形になっている。ここではアクセス特急がスカイライナー通過の退避をする。

下りスカイライナーの通過。退避しているのはアクセス特急。
このような光景は新幹線ではおなじみだが、速度は新幹線に及ばないものの、目の前を時速160kmというスピ−ドで突っ走るさまはなかなかの迫力。

上りスカイライナーの通過

新型スカイライナーの形式はAE形というが、8両固定編成で各車両の番号はAEX-Y(X編成番号、Y号車)と表記される。
右の車両はAE3-1(第3編成1号車)と表記されている。

AE車は当初は8編成が投入されるという。

上りアクセス特急 京成3050形 成田スカイアクセスに対応した新型車両で、開業と同時に営業運転を開始した。8両固定編成で当面6編成が投入される。

ホームの下を成田線が通っている。我孫子方面に向かうJRのE231系電車。
新根古屋信号場
アクセス特急で成田湯川駅を出発し「38番両開きポイント」を通過して単線となり、成田空港に向かうが、途中の新根古屋信号場で停車して上下線の行き違い交換を行う。行き違うスカイライナーはそのまま通過するが、アクセス特急は停車する。2本続けて待つ場合は10分近くの停車となる。

38番ポイント通過中

新根古屋信号場はたんぼのまっただ中、サギが散歩する
成田空港駅
成田空港駅(空港第一ターミナル)の京成線ホームは成田スカイアクセスに対応してアクセス特急専用ホーム1面が増設され、従来のホームと合わせると2面3線構造となった。ただし、従来のホームにはスカイライナーと一般電車が同じ線路に前後して停まる方式なので、一時に5本の列車が停まれることになる。

新設された成田スカイアクセス線コンコース

アクセス特急専用ホーム 従来のホームからは少し離れた独立トンネル。

アクセス特急の行先表示  行く先は朝方5時、6時台に西馬込行き、7時〜14時台は羽田空港行き、15時台に三崎口行き、16時台以降はは上野行きとなる。
鉄道総合ページ:「鉄道少年のなれの果て」