東横特急

東横線の優等列車は長い間、急行が運行されていたが、追い抜き設備などの関係で停車駅が多く、「隔駅停車」などと揶揄されるような状態であった。しかし、JR東日本の湘南新宿ラインの整備により横浜方面への利用者の流れが分散し、東横線の競争力に問題がでてきたため対抗策として平成13年に特急の運転を始めた。その後、みなとみらい線との直通運転開始など横浜方面へのアクセスの重要性が高まってきたことから特急の存在はきわめて価値のあるものになった。東急では、とくに「東横特急」という呼び名で認知度をあげるべく右のようなロゴを作って力を入れている。湘南新宿ラインも新型車両を投入しグリーン車を増結するなど着々と手を打っており、これからも激しい競争が展開されるものと思われる。

東横特急の停車駅は
渋谷−中目黒−自由が丘−武蔵小杉−菊名−横浜−みなとみらい−元町・中華街
で、渋谷−横浜間の所要時間は27分となっており、15分間隔で運転されている。
一方、湘南新宿ラインの渋谷−横浜間の停車駅は
渋谷−恵比寿−大崎−西大井−新川崎−横浜
であり、所要時間は27分、西大井と新川崎を通過する特別快速では22分となっている。運転本数は1時間に4本である。

東横特急VS湘南新宿ライン(渋谷−横浜間の比較)
線名 停車駅数 途中駅数 所要時間 運転間隔 営業キロ 表定速度 運賃
東横特急 4 19 27分 15分 24.2Km 53.8Km/H 260円
湘南新宿ライン (特別快速) 2 4 22分 4本/時 32.1Km 87.5Km/H 380円
(快速) 4 27分 71.3Km/H
通常、どちらに乗るかは所要時間、運転間隔と運賃で決まる。
所要時間と運転間隔はほぼ互角であり、運賃は東横特急が安い。 渋谷以北から湘南新宿ラインに乗ってきた場合はそのまま横浜まで行くほうがいいかもしれないが、山手線や地下鉄(銀座線、半蔵門線、田園都市線)、井の頭線から乗り換える場合には思案のしどころだろう。
横浜から先のみなとみらい地区や中華街へ行くのであれば直通している東横特急が断然便利。ちなみに、「みなとみらい」までは30分、440円、「元町・中華街」までは、35分、460円である。

表定速度ではJRが圧倒的に速い。(表定速度とは、営業キロを所要時間で割ったものを時速に換算したもので、停車時間も含まれるために、実際の走行速度より遅くなる。)
これは途中駅の数と、同じ線路を走る列車数がいずれもJRのほうが少ないからである。10時−16時帯での1時間当たりの列車本数を比較すると、東横線(中目黒−菊名間)の18本に対してJR(大崎-横浜間)では9本となっていて半分の密度である。また、JRは途中駅が少ないため駅間距離が長く、速度を上げられるという利点がある。表定速度は一般には縁のないものだが、こうして算出してみるとJRがスピード面ではまさっていることがわかる。

東横線はこれでようやく「優等列車」と呼べるものを実現した。それまでの急行は田園都市線の急行(中央林間−渋谷間31.5Kmを35分、表定速度54.0Km/H)などとくらべても大きく見劣りがしていた。これは停車駅をめぐって一部の地元の既得権に配慮しすぎた、いわば妥協の産物であったことが大きい。また中目黒で相互乗り入れする日比谷線直通の関係でダイヤ編成が難しかったこともある。今回の特急導入で停車駅を4駅に絞り、日比谷線直通も大幅に減らすなど、これまでのしがらみをかなり断ち切ったことは評価に値する。現在、目黒線伸長の工事に伴って元住吉駅の大改良が行われているが、ここでは東横線の追い抜き専用線が設けられることになっている。これにより、さらなる特急のスピードアップが図られる可能性がある。
今後、地下鉄13号線との直通運転も予定されており、特急列車のありかたも変わってくるだろう。そのときはまた違った姿で登場するかもしれない。(2005.02.14)
東横特急の車両

特急専用車両はとくになく、8000系、8590系、9000系、5050系、Y500系(横浜高速)を使いまわしている。


東急8000系 田園調布−自由が丘間  8037編成 (2001.10)


東急8590系 自由が丘−田園調布間 8693編成 (2004.05)


東急9000系 祐天寺駅 9005編成 (2005.02)


東急5050系 多摩川橋梁 5156編成 (2005.09)


横浜高速Y500系 田園調布−自由が丘間 Y516編成 (2004.05)