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西武池袋線・東武東上線 2014.01.10
東横線と副都心線直通運転によって、横浜から東京を経て埼玉県西部地域へのルートができあがった。これまでおよそ無縁だった地域どうしが一本の鉄路でつながるという相互直通運転は東京地区では多く行われているが、今回のように5社もの私鉄の線路によって実現したのは初めてであり、意義深いものがある。とくに昔は仇敵どうしだった東急と西武の相互乗り入れなどは、ほとんど考えられもしなかった出来事である。このような相互乗り入れでは直通する電車を介して人が移動することで、それまでは地域ごとに閉ざされていた文化が広がって行くという効果がある。やって来る電車ひとつをとっても各社各様のデザインの車両だし、車内広告を見ても地域のカラーが色濃く反映されている。その沿線の性格や雰囲気が伝わってくるのだ。当初は違和感があったり、珍しかったそのようなカラーもやがて慣れてあたりまえになり、だれも気にしなくなる。無意識のうちに容認し共有することになる。自然の成り行きである。

一方、相互直通ではそれを意識的に活用して、いわゆる地域の町おこしとか活性化という経済効果を狙う目的がある。たしかに電車一本で行けるようになれば、そこまで行こうという気にもなる。それを見越した客寄せイベントなどが各地で行われる。しかし、人の流れは水とは違って低きから高きに流れるのが普通である。つまり、より魅力的なほうへと人は足を運ぶのだ。魅力の要素とは、人それぞれに異なるだろうが、要するにそこに行って面白いかどうかであり、とくに最近はそれに加えてオシャレの要素が大きく効いてくるようだ。この伝によれば今回の相互直通では、オシャレ度の高い横浜方面への流れが大きいと考えられたが、直通開始直後の2013年のゴールデンウィークにおける各駅の乗降客数は、川越駅17%増に対し元町中華街駅は31%増と、そのとおりになった。最も増加したのが新宿三丁目駅で、63%の伸びを記録したという。これは伊勢丹新宿店などのオシャレ系に東横線方面からの直通客が大幅に増えたことを示している。池袋駅も15%増となったが、これはこれまで渋谷乗り換えでJR山手線を使っていた乗客が渋谷を素通りして池袋方面に流れたということで、このため渋谷駅では10%のダウンになり、山手線も同時に乗客数を減らすことになった。全体として輸送乗客数では副都心線が大幅に増加し、東横線・みなとみらい線も増加しており、東上線も川越観光客が増えたことから直通効果が大きく表れていることがわかる。ただ、西武池袋線では今のところそれほどの効果はないといわれている。これは他線にくらべて沿線に観光的スポットが少ないのが理由だろう。しかしその先には秩父がある。この一大観光地への利用者を増やすことで大きく飛躍する可能性を秘めている。一説にはレッドアロー号を乗り入れて横浜から秩父までの直通特急を走らせるといった話もあって夢をかきたててくれる。
(データはダイヤモンド社による)

東横線沿線住民としては、今回の直通により西武池袋線と東武東上線へ行ってみる楽しみができた。東横線内を走る東京メトロ・西武・東武の電車はもう当たり前になったが、西武線内と東武線内を走るメトロ・東急・横高の電車も見なくてはならない。しかし、なにしろどちらも長丁場である。一日では無理なのでそれぞれに分けて行ってみた。
西武池袋線
西武池袋線は池袋-吾野間57.8kmを結ぶ路線だが、特急を除くほとんどの列車は途中の飯能駅が終点で、その先に行く列車は飯能駅から西武秩父駅に向かう西武秩父線の列車となる。特急レッドアロー号は池袋駅から西武秩父駅までを直通する。地下鉄への乗り入れは、練馬駅から地下線の西武有楽町線が分岐していて、東京メトロの小竹向原駅で有楽町線と副都心線に接続し、それぞれに乗り入れる。これまでは有楽町線の新木場駅と副都心線の渋谷駅までの乗り入れだったが、東横線・副都心線の相互直通によって西武鉄道にとっては東京メトロ線以遠の乗り入れが初めて実現したことになる。
地下鉄からの乗り入れ列車は、行き先が石神井公園・保谷・清瀬・所沢・西武球場前・小手指・飯能と多く、列車種別は快速急行・快速・普通の3種類となっている。とくに快速急行は副都心線直通に合わせて設定された最速列車で、飯能-元町・中華街を95分で結ぶ。

特急「ちちぶ」10000系 石神井公園駅

地下鉄乗り入れ専用車 6050系

ユニークな顔の30000系

脱黄色い電車の先駆け 20000系

はるばるやってきた東急車 5050系

元町・中華街行きの東急車 5050系

「西武の主」黄色い電車と並ぶ東急車

所沢駅は池袋線と新宿線のジャンクション 所沢は西武グループの本拠地で駅の近くには西武鉄道の本社がある

所沢駅に進入する東京メトロ10000系

飯能駅は池袋線の事実上の終点 

飯能駅に進入してくる東京メトロ10000系 左に曲がって行くのが秩父方面で西武秩父線からの普通列車はすべて当駅止りとなって折り返す。「特急ちちぶ」は当駅でスイッチバックしてゆく。
東武東上線
東武東上線(正式には東上本線)は池袋駅-寄居駅間75.0kmを結ぶ路線で、東武鉄道としては伊勢崎線と並ぶ幹線である。池袋からの列車は寄居までは行かずに小川町駅で終点となり、寄居まで行くにはここで乗り換えなければならない。寄居駅では秩父鉄道とJR八高線に接続している。地下鉄との接続は和光市駅で、東京メトロ有楽町線と副都心線に乗り入れて、新木場または元町・中華街駅まで直通運転する。地下鉄側からの列車の行き先は、志木・川越市・森林公園で、終点の小川町までは行かない。さらに、森林公園駅まで運行するのは東武車だけで、東京メトロ車と東急車は川越市駅までの運行となる。列車種別は地下鉄からの乗り入れはすべて普通である。

川越市駅

ホームの案内板 相互直通の実感が沸く。  東武車以外の列車はすべてここで折り返しとなる。

東京メトロ車7000系(左)と並ぶ東武の地下鉄乗り入れ専用車50070系

駅の西側には2線の引き上げ線がある 東京メトロ10000系(左)と東武10030系

池袋行き東武50000系 地下鉄には乗り入れない地上線タイプ

東武30000系 かつて伊勢崎線-半蔵門線-田園都市線の直通運転で活躍していたが、東上線に移って地下鉄乗り入れはなくなった

有楽町線新木場行きの東京メトロ10000系

進入する東急5050系4000番台

東急5050系の10両編成車4109F 折り返し元町・中華街行きとなる。東急車による川越市駅までの直通は1日4本のみ。
西武新宿線本川越駅
西武新宿線のターミナルで川越市駅から徒歩5分のところにある。川越の中心部には最も近い。

特急「小江戸」10000系

西武2000系
川越散策
川越市は埼玉県西部に位置する都市で、さいたま市、川口市に次ぐ人口35万人を擁する。江戸時代の川越藩の城下町として栄えたため、歴史的な街並みや寺院などの史跡も多く、年間600万人の観光客を集めるという。

川越駅は東上線(東口)とJR川越線(西口)がそれぞれホームを持っており、改札外の連絡通路でつながっている。

江戸時代からの蔵造りの家並みが保存されている。



川越のランドマーク「時の鐘」
寛永年間(1627ごろ)に川越藩主酒井忠勝により建てられたものが最初とされるが、明治26年(1893)に大火で焼失し、翌年に再建されて現在まで使われているという。1日4回鐘が撞かれて時を知らせている。

埼玉りそな銀行川越支店 もと第八十五銀行の本店として大正7年(1918)に建てられたという。国の登録有形文化財に指定されている。市内にはほかにも大正時代の雰囲気を残す町並みが保存されている。

喜多院(川越大師) 天台宗の寺院で、第18代天台座主の慈恵(じえ)大師(または元三(がんざん)大師)良源を祀っている。厄除け大師として信仰を集めているというが、不思議なことに境内には弘法大師像もある。やはり「お大師さん」といえば弘法大師なのだろうか。

五百羅漢 喜多院に隣接して533体の羅漢像が鎮座している。一体一体の様々な表情は見ていて飽きない。
 鉄道総合ページ:「鉄道少年のなれの果て」