西武電車がやってきた副都心線直通関連 2011.09.15 
東急電鉄では、来年度(2013)に迫った東横線の東京メトロ副都心線直通に向けて代官山−渋谷間の地下化工事がたけなわであるが、それと平行して10両編成に対応したホーム伸長工事や、車両の新製、乗り入れ対応工事などが急ピッチで行われている。そしていよいよ乗り入れ各社の車両による相互試運転が始まった。各社がそれぞれの車両を貸し出して、相手先の線路で走行テストをするのである。副都心線はすでに東武東上線と西武池袋線との相互直通運転をしているので、今回は東急の車両が副都心線、東上線および池袋線を走って試験をすると同時に、東京メトロ、東武、西武の車両が東横線の線路で走行試験をするのである。試運転は直通開業後に実際に使われる車両によって行われる。東急は5050系4000番台、東武は9050系、西武は6050系、東京メトロは7000系が使われている。試運転は電気・信号関係や車両の幅によってホームを通過できるかなどがテストされるものと思われる。各社とも申し合わせにより、車体の寸法はほぼ同じだが、幅などは微妙に違いがあるといわれている。
走行試験に先立って試験車両は相手先の車両基地に送り込まれる。東急車は東京メトロ・和光検車区、東武・森林公園検修区、西武・小手指車両基地に順次送られ、東京メトロ、東武、西武の各車両は東急・元住吉検車区に送られてくる。そして、終電後の深夜に各線において試験走行を行うのである。各基地への送り込みも終電後の深夜に行われるため、一部のマニア以外の一般人はほとんど目にすることはない。

ところで、車両基地に電車が行くには当然ながら線路がつながっていなければならない。東横線はまだ副都心線とつながっていない。にもかかわらず、ちゃんと相互に行き来している。なぜか?実はそれまでに建設された地下鉄によってすでにネットワークが出来上がっているのである。だから副都心線につながっていなくても別ルートで電車が移動できるのだ。たとえば、東急車が東京メトロの和光検車区に行くときは、元住吉検車区−(目黒線)−目黒−(南北線)−市ヶ谷−(市ヶ谷連絡線)−(有楽町線)−和光検車区というルートを辿る。東武の森林公園検修区へは、有楽町線の和光市駅から東上線にはいり、西武の小手指車両基地へは、有楽町線小竹向原駅から西武有楽町線経由で練馬駅から池袋線にはいる。元住吉検車区へはこの逆ルートを走ることになる。 
このようにして回送された電車は、相手先の線路を何度か往復して試験走行をおこなうのである。
すでに、東急車(4102F)は3路線で順次試運転中であり、東京メトロ車(7120F)および東武車(9151F)は東横線内の試験を終了してそれぞれの基地に戻っている。最後にやってきたのが西武の6154Fである。

東京メトロと東武はすでに東急と相互直通しているが、東急と西武の電車がお互いの線路に入線するのは初めてであり、それこそ開闢以来の出来事である。というのも、かつて両社はいろいろな事業でライバルとしてぶつかり、敵対してきた歴史があるからである。本来の鉄道路線はまったく競合していないが、遠く離れた伊豆箱根地域の鉄道をめぐる熾烈な争いは「箱根山のさるかに合戦」として記憶されている。まだ西武百貨店が西武鉄道傘下だった1968年に東急の牙城である渋谷に進出したときは大騒ぎになったくらいに両社の仲は良くなかったのである。

しかし時は移り、地下鉄ネットワークを経由した相互直通運転で鉄道のありかたが変化し、各社とも協調しなければ生き残れない時代になった。かくして、いつもの駅に見慣れない電車がいきなりやってくるという現象があちこちで起きることになるのだ。

ともあれ、元住吉検車区に東武、西武、東京メトロの電車が相次いで来ているとの情報を得て、さっそく駆けつけた。東京メトロの7120Fはすでに帰った後だったが、東武の9151Fと西武の6154Fの姿は見届けた。いずれ来年の直通開始後は毎日見るようになる電車たちだが、いま遠路はるばるやってきて東急の電車と並んでいる光景はなんとも不思議な感じがする。とりわけ西武車には感慨深いものがある。一昔前だったら考えられない驚天動地の出来事である。五島昇さんも堤康次郎さんも天国でビックリしているだろう。

 東急5050系と並ぶ西武6050系(6154F) (2011.09.14)


 車体側面下部にはホームと車体間のアローワンスをチェックするためと思われるマーカーが貼り付けられている。


 東武9050系(9151F) 同様のマーカーが貼られている。 (2011.09.11)


 東急5050系4000番台(4101F) 副都心線直通のために新製された車両。 仕様は5050系そのものだが10両編成。この4101編成は8両編成化されて副都心線直通開始までの間、東横線で営業に就くものと思われる。現在乗り入れ試験にあたっているのは、第2編成(4102F)である。
(2011.09.11)

 (追補)
 東京メトロ7000系再来    2011.10.23

 東京メトロの7000系電車が再び元住吉検車区に入場している。前回は8両編成の7120Fだったが、今回は10両編成の7102Fである。副都心線直通開始後の東武、西武の乗り入れ車はすべて10両編成だが、東京メトロの車両は10両のほかに8両編成がやってくる。10両編成の列車は東横線内では特急や急行といった優等列車として運行されるが、東京メトロの8両編成は普通列車として運転されると思われる。東急においても新製もしくは増結による10両編成の車両が準備されている。
 東京メトロ10000系再入場    2012.09.05
 
2012年5月に続いて再び10000系が来ている。今回は8両編成の10104Fで、初めて渋谷駅にも入線して日中の試運転を行った。その後先行営業運転にあてられた。

今後、2013年3月16日の直通運転開始に向けて東武50070系も試運転にやってくるのだろう。
 
 東武50070系試運転    2012.10.16
東武鉄道の50070系51072F電車が東横線で試運転をしている。10両編成と退避設備の関係で元住吉検車区から元町・中華街駅までを数往復しているようだ。元住吉検車区の横浜方出庫線から本線に出て元町・中華街駅まで行き、折り返していったん武蔵小杉駅まで戻り、ここで再び折り返して目黒線の線路から入庫線にはいって一往復となる。

 試運転の一往復を終えて武蔵小杉駅から元住吉検車区に入庫する。

 そのまま検車区の留置線に戻る。

 入庫した51072Fは東急5080系(左)と9000系にはさまれて停まっていた。

東武東上線用の50000系シリーズには、地上線用の50000系と50090系および地下鉄直通用の50070系があり、東京メトロ有楽町線と副都心線で運用されている。ほかに伊勢崎線系統用の50050系があり、半蔵門線から田園都市線に乗り入れている。

 小休止のあと再び横浜方向の出庫線から試運転に出て行った。

 増備された5050系4000番台。4106Fと4105F。現在まで9編成90両が新造された。10両編成車はすべてこの4000番台になるものと思われる。

 副都心線直通の一方で日比谷線直通が廃止されることになった。東横線から姿を消す東急1000系(左)と東京メトロの03系。
関連動画:東横線内東武50070系試運転
 
東京メトロ車先行営業運転     2013.01.17
 東横線内では昨年(2012)秋から東京メトロの車両による先行営業運転が行われている。使用されている車両は10000系および7000系(※)の8両編成車で、2013年2月17日までそれぞれ4週間ごとに入れ替わり、毎日運転される予定になっている。ただし、毎月日曜日の1回は運休する。運行パターンは、菊名−渋谷−元町中華街を2往復半、渋谷−元町中華街を6往復、元町中華街−渋谷−武蔵小杉入庫となっている。列車種別は特急・通勤特急・急行・各停とまんべんなくこなすが、上りは優等列車、下りは各停が多いようだ。3月16日を過ぎれば見慣れた光景になってしまうのだろうが、新鮮なうちにとりあえず撮影。
(※7000系は2012年12月の故障以来運休しており、東急車が代走している)

 急行渋谷行きの10105F 田園調布−自由が丘間

 渋谷から折り返してきた各停元町・中華街行き 都立大学−自由が丘間

 急行渋谷行きの5151Fとすれ違う各停元町・中華街行き 妙蓮寺駅
 
東急5050系に8両編成表示    2013.01.24
 東急5050系に8両編成表示のステッカーが貼られ始めている。副都心線直通運転の準備もいよいよ大詰めといったところか。ステッカーのデザインは東京メトロ(上の写真)と同じだが、東横線用5050系にあわせた「さくら色」の色違いとなっている。今後横浜高速のY500系にも貼られると思われるが、青色の色違いとなるのだろうか。

 田園調布−自由が丘間
 関連ページ:   鉄道総合ページ「鉄道少年のなれの果て」
 東京メトロ副都心線
 東武鉄道「和光市駅」
 西武鉄道「練馬駅」