Package Pirates

コロナ禍の影響で、我が家でも宅配便を使う頻度が激増しているが、それも対面渡しではなく「置き配」が増えている。
これは、受取人の不在にかかわりなく配達できるので、配達人と受取人双方にとって都合のよい方法だ。配達完了をメールで通知してくれるのもありがたい。しかし一方で、玄関先などに置かれた配達物が無事かどうかは気になるところだ。
米国などでは、置き配された配達物が盗まれるということが頻発していて「Package Pirates」と呼ばれているほどに横行しているらしい。そのため、各家庭では、監視カメラを家の周りに配置して自衛しており、SNSにもその犯行の様子がたくさん投稿されている。それを見ると犯人たちの、いけずうずうしい態度がなんとも腹立たしい。車で乗り付けて目標の家の前で降りると、庭を突っ切って一直線に玄関先にやってきて、あっと言う間に持ち去るかと思えば、宅配便のトラックを見張っていて、配達が済んだのを見計らってやってくるのだ。
家人側もモニターで見張っていて、スピーカー越しに声をかけたりするが、驚いて何も盗らずに逃げる者はまだしも、荷物を抱えて逃げるヤツもいて、家人が銃をもって玄関から飛び出して追跡するなど、アメリカらしい光景も展開する。
犯人は男女を問わず、とにかく手慣れた様子で他人の家の敷地に侵入する様子は信じがたい。多くが郊外の住宅地区で敷地が広く、家屋どうしが離れていて、犯行が人目に付きにくいということと、配達された荷物は玄関先にかなり無造作に置かれているので、意識的に獲物を探している犯人には見つけやすいのだろう。

日本での置き配サービスは、再配達を減らすための策のひとつとされている。都会に住む単身者は昼間は勤めや学校などに出かけているので、留守がちである。荷物の配達人にとっては厄介なことで、再配達しなければならない。それが置き配であれば、確かに配達した、という証拠写真を撮るなり、通知を残すなりすればよい。ただし、置いた後での盗難については責任を持てない。
日本でも当然ながら窃盗や持ち去りはおきているという。とくにアパートやマンション各戸の入り口ドア前などから持ち去られるのだろう。このような場合には宅配ボックス利用や受取り場所を外部に契約してそこに留め置きするようにしておけばよいのだが、そのような対策が不可能な場合には置き配の利用はやめるべきである。そもそも、置き場所に関して安全を確保するのは受取人側だろう。
大手の通販業者によっては、置き配後の盗難を補償するところもある。Amazonでは再送または返金という形で対応するという。盗難の事実をどうやって確認するのか定かではないが、返金した実績はあるらしい。ところが、やはりこの制度を悪用して詐欺行為をはたらく輩がいるのだ。実際には荷物を受け取ったにもかかわらず、盗難に遭ったと申し出て返金を受けたというのである。Amazon側でどういうチェックをしているのかわからないが杜撰極まる。
日本では落とした財布は無傷で戻ってくる、とか無人店舗でも商品が盗まれることはない、などと喧伝されてはいるが、今やそんな美談は残念ながら通用しなくなっている。
配達業者が責任をもって荷物を届けるのと同時に、受け取るほうも安全な受取場所の指定に責任をもつのが当たり前にならなければ、この種のトラブルは増える一方だろう。
(2022.03.01)