ワールドカップの仰天


南アフリカでの日本チームの闘いが終った。結果は決勝トーナメントでPK戦の末に惜敗した。しかし決勝トーナメントに進出したこと自体が日本にとってはとてつもない一大事だったのだ。そしてさらに、決勝戦で0対0のままPK戦にもちこんだということは、本割の試合では引き分けたのであり、決して負けていなかったということだ。こんなにもすごい結果をほとんどの日本人は予想していなかっただろう。まさに仰天ものである。PK戦は言ってみればジャンケンのようなものである。もちろんキックの技能もあるが、その時の運にも左右されるものである。だからあまり負けた負けたと悲観する必要はないのではないか。日本チ−ムは全力を出し切ったのだ。それによって日本中が高揚し、感動したのである。さきごろの「はやぶさ」の帰還とともに、久しぶりに日本人が勇気と自信を取り戻すきっかけを与えてくれるかもしれない大快挙である。

それにしても、今大会での日本チームの成長ぶりはまさに目を見張るものだった。前回のドイツ大会の時は、拙稿”W杯雑感”で書いたように、サッカーにドシロウトの私でさえもよくわかるくらいに世界のチームとの開きがはっきりしていた。なにしろ観ていて、とにかく歯がゆい、ゴール前での混戦になす術もなくボールを蹴こまれる、なんとなくチーム全体がバラバラでまとまらない・・・。

ところが今大会はそのようなマイナスの面はすべて払拭された。とにかくよく走り、チーム全体が連携して動き、果敢に攻撃を仕掛け、防御した。とくに守備は堅かった。4戦して4得点・2失点という結果からもそれがわかる。対戦相手はいずれも世界ランキングで日本より格上の国のチームである。4得点のうち2得点はフリーキックによるものだが、フリーキックに持ち込む戦術も冴えて、それぞれ絶妙なキックを見せつけた。

このように私のようなシロウトはただただ喜んでいるのだが、ここまでくるのに、岡田監督がなめた辛酸は大変だっただろう。大会前の強化試合などでは全敗という状態で、メディアは最大級の非難を浴びせた。それに同調してサポータやファンがさらに非難する。さすがの監督も一部のメディアに対して反論したというが、空気は変わらない。実のところ私も4年前と同じかな?と思っていた。

しかし、そんな中で選手たちはむしろ結束を強め、本番に臨んだのだろう。初戦のカメルーン戦では大方の予想を裏切る試合運びを見せつけた。そして本田選手がみごとな1点をもぎとり、そのまま1対0で勝利するに及んで、もう日本中の空気は一変した。それまで非難していたメディアやファンたちはチームに対して総懺悔となった。なんとも変わり身の早いことだがこれも国民性ということか。しかしこれで1次リーグ突破への希望がつながったのだ。そしてこのあとチームは期待通りの善戦を見せてくれた。

今回の代表チームは前回にくらべてチームワークが格段によかったという。そもそも代表チームはこの大会のために組織されるもので、選手はいわば寄せ集めである。そのためいろんな性格の人間が集まることになる。しかも選手たちはそれぞれ所属するチームのトップクラスで自己主張も強く、なかなかまとまらない。これらの選手たちを束ねることが一番の大仕事なのだが、そこがうまくいったのだろう。最後の試合のあと、選手たちは口々にチームワークがよかったと言っていた。そこはやはり、ワールドカップで初めての日本人監督を戴いたことが大きいのではないか?なによりも監督と選手たちの意思疎通に通訳が入ったりしてはうまくいかないし、信頼関係もなかなか築けないだろう。

また4年後のブラジル大会に向けてつぎの挑戦が始まるが、代表チームの監督も選手も変わるだろう。すくなくとも監督については岡田監督自身はそう言っている。だが、つぎもぜひ日本人監督でいってもらいたい。普段はJリーグなどのサッカーには疎いが、ワールドカップだけは大ファンのひとりとしての切なる願いである。
(2010.07.01)