IPアドレスの枯渇 |
インターネットの爆発的な普及によって、今年後半にはIPアドレスが枯渇するという。どういうことかというと、もうこれ以上インターネットに接続できるアドレスがないということだ。IPアドレスというのは、インターネットに接続しようとする利用者に割り当てられるアドレスである。これは唯一無二のものであり、同じアドレスをもつのもは世界中に二人といない。したがって、インターネットの利用者の増加に伴って際限なく必要になってくる。これまではおよそ43億個のアドレスが用意されていた。1990年にインターネットが解放されて、本格的な利用が始まってからわずか20年たらずで、そのアドレスが底をついてしまったのである。このことは当初から予想されたことで、ほぼ予想通りの結果となった。それではこれからどうするか。そのための手だてはとっくに用意されている。
IPアドレスとは、一般に”123.123.123.123”のように、0〜255の数字を4個組み合わせて表現されている。このすべての組み合わせが43億通りあるということである。アドレスを増やすには、この組み合わせの数を増やせば良いことになる。つまり0〜255の数字を5個以上使えばよいのである。そこで思い切って16個の組み合わせで表わすことになった。そうするとどうなるかというと、なんと!43億の4乗→3.4×1038個(340兆の1兆倍の1兆倍)という、ほとんど無限に近い数のIPアドレスが使えるようになるのだ。 これまでの規格は1983年に制定された”IPV4(IP Version4)”だが、新しい規格は”IPV6”といって1998年にまとめられたものである。実用化は進められていて、すでに日本でも一部のISP(Internet Service Provider;プロバイダー)やNTT東日本、西日本などで実用化されていると聞く。 IPアドレスの管理はICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers )という国際管理団体が元締めで、そこから地域別、国別といった256の下部団体に割り振られる。日本の管理団体は日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)で、そこからそれぞれのプロバイダーに割り当てられ、利用者に付与されるのである。 日本の場合はまだ現行のIPアドレスの在庫があるので、すぐには枯渇とはならないらしいが、いずれIPV6の運用を始めなければならないだろう。最近のWindowsではIPV6に対応しているので、ユーザー側にはあまり負担とならないようだが、ISPなどでは設備の増設や更新などの負担が生ずるという。 Internet World Statsによる2010年6月の統計では、全世界のインターネットユーザーは20億に上り、そのうち42%がアジアで、ヨーロッパ24.2%、北米13.5%などとなっている。6年前には全世界のユーザー数が7億人だったのを考えればいかに急速に普及したかがわかる。これでは、IPアドレスもどんどんなくなる道理である。 インターネットはすでに世界を動かす社会インフラとして定着したが、動かすだけではなくいろんな面で世界を劇的に変えてゆくような事例が頻発している。つい最近も北アフリカのチュニジアでインターネット上での呼びかけに呼応した群衆が独裁政権を倒した。さらにこれがエジプトに飛び火して現政権が崩壊の危機に立たされている。このようにインターネットは使いようによってはまさに両刃の剣である。ネット上に飛び交う情報はだれも止められないし、一度流れた情報は取り返せない。IPアドレスの心配はなくなってますますユーザーは増える。それに伴ってネット上のトラフィックは増え続けるだろう。しかし、もう引き返せないのだ。 これからは世界中がいかにインターネットとうまく付き合ってゆくか知恵を絞らなければならない。(2011.02.02) |