冷蔵庫の臨終


20年以上も働いてくれた我が家の冷蔵庫がとうとう動かなくなった。
朝食のときに冷蔵庫を開けるとなんだか生暖かい。まさか!と思って調べると冷凍ものの表面が汗をかいていてちょっと柔らかくなっている。
機械は完全に止まっている。まずい!とうとう来たか!
このところずっと変な音がしたり、ときどきコンプレッサー音も大きくなってきていた。
もうそろそろ危ないとは思っていたが、やっぱりその時が来てしまった。
家電製品で壊れると困るのはなんといっても冷蔵庫だ。食料品の貯蔵庫を兼ねているし、生活の基盤だからだ。それに止まってしまうとなにしろ冷凍ものは直ちに溶け出すのでエライことになる。
幸いもう1台古い冷蔵庫があるので、とりあえず冷凍ものを移した。なにはともあれ、すぐに買い替えなければならない。近くの家電量販店にとんでいって、新しい冷蔵庫を買い求め、今日中に届けてもらうことにした。ひとまず安堵して家に帰って、残りの内容物を整理しようと冷蔵庫の扉を開けると、不思議なことにさっきよりも何となくひんやりしている。かすかにコンプレッサーが動いている。あれ!生き返ったのか? 新しいのを買っちゃったよ。。。と、しばらく様子をみていたらやがてコンプレッサーが静かに停まった。
そしてそれっきり動かなくなった。最後の力を振り絞ってこと切れたように見えた。
図らずも長い間一日も休まずに働いてくれた冷蔵庫の臨終に立ち会ったのだ。
12年前に他界した女房と3年前に旅立った母の臨終に匹敵するような、愛着のある冷蔵庫との別れであった。
(2015.03.20)