Windowsアップグレードの顛末


MicrosoftではWindowsの新バージョンWindows10を1年間は無償でアップグレード提供するという、これまでになかった方式を公表した。それによると、希望するユーザーにはインターネット経由でアップグレードの作業を自動で実施してくれるのだ。7月の初めごろからPCのタスクバーに見慣れないアイコンが表示されるようになった。クリックしてみると、Windows10へのアップグレード予約のおしらせとある。そこの予約ボタンを押すと、作業実施が予約され、MS側の準備ができ次第通知がくるので、ユーザーが自分の都合に合わせて作業を開始する、という仕組みである。さらにMS側ではこのPCでアップグレードできるかどうかの評価まで、いつの間にか行っているのである。そのPCにインストールされているプログラムやデバイスなどの互換性の可否、必要なディスク容量などの情報が記されている。この結果を参考にユーザーはアップグレードを実行するかどうかを決断できるのだ。

ウチのPCはW7でかれこれ5年は使っている。さしたる不具合もなくよく働いてくれている。それでも、やはりゴミが溜まってきてCドライブの空き容量が心細くなってきた。ディスククリーンアップで引っかからないゴミをときどきエクスプローラで探して掃除するのだが、下手に消すと危険なこともあり、つい及び腰になるのでなかなか減らない。こんなときには、OSを入れ替えてやれば初期状態になってゴミは一掃されるはずだ。

そんな矢先にW10の話だ。すでに7月29日にリリースしバージョンアップサポートを開始したという。今のPCの適合評価を見てみると、合格となっている。必要なディスク容量は5GBとある。ギリギリ大丈夫だろうと踏んで、とりあえず予約しておこうとボタンをクリックした。すると!「バージョンアップを始めます」というメッセージが出たではないか!こちらとしては何日か後に準備でき次第連絡が来ると思っていたのに、いきなり、「さあやろう!」ときたのだ。世間ではまだ時期尚早との声もあるので、もう少し様子を見ようとしていたのだが。。。 しかしここに至ってちょっと考えた。「まあ先送りしてもしょうがない、ヒマだし、この際やっちまおう」と決めた。そして、腹をくくって目をつぶって「南無釈迦牟尼仏」と唱えながら「続行」のボタンを押したのだ。つまりは衝動的にバージョンアップを敢行してしまったのである。

スタートしてから延々とPCは勝手にバージョンアップ作業を続けていたが、途中で「ディスク容量が不十分です」とメッセージが出た。そんなはずはないと思ったが、空いているドライブを選定しろ、というのでDドライブを指定すると続行し、結局約2時間ほどで終了した。

再起動ののちに新しいOSが立ち上がり、デバイスドライバなどを読み込んだりモニタの解像度などを調整したあと新しい背景の画面が表示された。デスクトップは見かけ上はW7とほとんど変わらないので違和感はない。

使いだして何も問題がないかといえば、ヘンなことはある。たとえば、YouTube閲覧などで突然インターネット接続が切れることがある。大量のパケットを受信するときに落ちるようなのだ。調べてみると無線LANの子機が認識できていない。おそらくW10との互換性の問題だろう。まだ、W10対応の通信機器は少なく、メーカーもこれから様子を見ながら製品を出してくるのだろう。今のところメールや通常のインタ−ネット接続にトラブルはないので、使用に差し支えはない。W10対応済みのデバイスが出たら入れ替えようと思う。

今回のような同じPC上で新Windowsにバージョンアップするのは、20年前にWindows3.1を95にしたとき以来だ。あのときは20枚くらいのフロッピーディスクをとっかえひっかえしながら、半日以上かけて付きっきりで作業した。途中で厭になってしまうくらいの長い時間がかかったが、最後にちゃんとWindows95がインストールされたときは、なにか達成感を覚えたものだ。その後のWindows98、XP、および7のときはそれぞれハードウェアごと入れ替えた。バージョンアップのフル作業は20年ぶりだが、当時と比べてなんと楽になったことか。隔世の感がある。

かくして、ちょっと先走りのWindows10となってしまった。もう後戻りはできない。しばらくはなにか不具合が出るかもしれないが、ひとつひとつ付き合ってゆくしかない。そもそも無償アップグレードなどというものは、ユーザーをモルモットにしていろいろ使わせて、不具合の検証をするようなものである。PCメーカーは最新の機種はテストをして対応済みにしているが、古い機種については今回のアップグレードを「推奨しない」としている。しかし大方のユーザーは古い機種のPCにWindows10をインストールするのだろう。PCメーカーとしては買い替え需要を期待しているのに、アップグレードして古い機種が問題なく動くようでは困る。一方で、古い機種で動かない、というクレームが来るのも困る。そこで、「推奨せず」という予防線を張っているのだ。だから、ユーザーもそこは覚悟して自己責任でアップグレードすべきだ。もし動かないようなら、インストール後1か月以内であれば、もとに戻すことができる。そして、1年後に有償バージョンを搭載したPCを購入すればよいのだ。
(2015.08.21)