米朝決裂


2月27日の米朝会談が物別れに終わった。ほとんどが予想していなかった決裂という結果に世界中が驚いた。この会談の目的は北鮮側の非核化のロードマップに対して見返りとしての経済制裁解除や援助をどうするかという議論である。

双方の要求の隔たりが大きかったということだが、しかし米国大統領が相手の要求へのハードルを急にその場で引き上げたという印象だ。一方で相手の北鮮独裁者の読みが甘かったということもできる。会談前での大方の予想では、トランプが前のめりになっていて、安易な妥協に走るのではないかという懸念が多数を占めていた。その様子をみてジョンウンは大きく吹っ掛けても大丈夫だろうと高を括ったのではないか、という観測がもっぱらだ。ではなぜトランプはかわしたのか?がポイントだ。当然このような会談では事前に実務者サイドの下調べがある。それをもとに判断をするのが普通の大統領だ。しかしトランプの場合は自分流の判断を優先させて決断することが多いといわれる。その時々の情勢から自国内における自分の支持者向けの判断をするというのだ。このような姿勢は世界的にも多くの指導者がとっているもので、民主主義体制のもとでは選挙対策としてごく当たり前なのだが、トランプの場合はそれが強すぎるという。今回も米国務長官ポンペイオや大統領補佐官のボルトンなどによる対北戦略の進言があったうえでトランプ独自の判断を下すつもりだったのだろうが、今度はこの側近たちの主張を入れて対北強硬姿勢に打って出た結果、北鮮側が対応できなかったことで最終的に決裂となったという分析がなされているのだ。つまりトランプはいつも通りの流れではなかったのだ。その原因とされるのが会談の当日に米国議会で開かれた、トランプのかつての顧問弁護士に対する公聴会だった。ここでトランプの名誉を傷つけるような多くの証言が飛び出したといわれている。自分の留守中に起きたこのような不利な状況を挽回するには、ハノイにおけるこの会談をもってするしか方法はない、と踏んだのだろう。そこで北鮮に対するハードルを上げることで安易な妥協を避け、相手の要求を一発で粉砕したのである。これにより独裁者は返す術もなくノックアウトされたのだ。鮮やかといえば鮮やかな結末だった。これで北鮮は喫緊の経済制裁の緩和はすべて吹っ飛び、現状のままが続くことになる。ジョンウンにとっては予想外の展開となり、失意のまま手ぶらで、もと来た線路を60時間かけて帰国する羽目になったのだ。
そもそも、国内を恐怖体制で抑え込み、人権抑圧をほしいままにし、世界の大方の反対を無視して核やミサイル開発に狂奔してきた貧乏国の独裁者が、米国の大統領と対等に会談するなどというのはおこがましいのだ。たまたまトランプというひとが異色の大統領であったからである。それに行く先々で赤ジュータンで歓迎されたというのも、ヘンな国の独裁者を珍獣でも見るように興味本位で歓迎したのだろう。ジョンウンは完全に勘違いをしているに過ぎないのだ。この先、北鮮が勘違いのまま外交を続けることは困難になったと考えるべきである。
今回の決裂の直接原因である核施設の廃棄を巡る問題では、北鮮側が提示した寧辺の核施設だけの廃棄に対して米国側は十分でないとした。そして米国がすでに存在を把握しているという寧辺以外にあるすべての核施設も含めるべきと主張した。北鮮側はバレていないと思っていた隠蔽核施設を持ち出されたことに意表をつかれて腰砕けになったのだ。おそらく米国側はこの要求を引っ込めることはしないだろう。最新の情報ではこれらの隠蔽核施設は引きつづき稼働しているとされる。ジョンウンはやはり騙していた。しかし体制維持のために核を絶対に手放さないと考えられる。
追い詰められたジョンウンは次はどのような騙しのテクニックを繰り出してくるだろうか。
(2019.03.06)