詐欺電話顛末記


特殊詐欺の電話がかかってきた。
玉川警察署の生活安全課のヤマザキと名乗る男で、最近詐欺グループを検挙したところ、銀行員上がりの人間がいて、そいつらが7000人分の名簿をもちだしていて、詐欺のターゲットをそのなかから選んでいるらしい。対象となる金融機関は、みずほ、三菱UFJ、りそな、ゆうちょの各銀行という。手口というのは、名簿の情報からキャッシュカードを偽造し、ATM等で現金を引き出しており、被害が出ているというのだ。
そこで玉川署と金融庁が合同で対策に乗り出して、名簿にあるひとりひとりに電話で問い合わせ調査しているという。その結果、その名簿に小生の名前が入っているというので連絡してきたという話なのだ。
偽造カードによる出金では口座の入出金履歴には出金記録は残らないので、被害者は不正に出金されたことには気づきにくいという。そこで、最近のキャッシュカードの使用状況(年月日など)を教えてくれれば、被害に遭っているかどうか調査できる。口座番号などは警察では聞かないことになっている。このセリフを何回も使って強調した。安心させるためだろう。

どうやって調査するんだ。と聞くと金融庁にはすべてのデータがあるのでそれを調べるという。怪しいと思ったので、ちゃんと説明しろ、というと詳しくは金融庁と協力して調査しているのでそちらに聞いてくれ、といって金融庁関東なんとか局のナカジマと名乗る男に代わった。
これでまず詐欺に間違いないと確信した。ほかの人間に代わる劇場型と金融庁を騙る詐欺は多いからだ。さらに疑惑が深まったのは、そもそも国の機関が個人に対して電話をかけるなどということはおかしいし、そのような偽造カードの件は各銀行で利用者あてに注意喚起があるはずだ。そう言ってやると、この件は銀行関係者が加担しているので、銀行を通すわけにはいかない。などと訳の分からんことをいう。ますます怪しい。
それで、当方としては何をすればいいのか、と聞くと所有しているキャッシュカードの最近の使用状況を教えてくれ。そうすれば、カードが偽造されているか、偽造されていた場合に被害が出ているかどうかを調べてお伝えする。ついては今この時点で教えてほしい、というのだ。いますぐそんなことはできない、教えるなら警察に出向いて教える。というと、警察にはいま同様の問い合わせが来ていて7人が説明を聞くために待っている、と全く筋の通らないますます混沌とした話になった。もう埒が明かないので、とにかく今はデータがないので教えられない、と拒否すると夕方になれば待っている人も終わるので電話をしてくれ、と玉川警察署の電話番号(意外にも正しい番号 0337050110)を告げて引き下がった。
ここまで30分の押し問だったが、こちらも初めから「怪しい」を連発していたため、信用できないならパトカーで行って説明に上がるなどとアホなこと言うので、拒否した。
詐欺電話に間違いないと確信したものの、ちょっと心配になったので、しばらくやっていなかった通帳の記帳をしようと各銀行に出向くその道すがら、折よく特殊詐欺注意喚起の警察の広報カーが通りかかったので、呼び止めていまの不審電話の件を通報したら、ただちに詐欺と断定された。
銀行から帰宅してから、玉川警察署に電話して一部始終を通報しておいた。するとさらに夕方になってこんどは警視庁から、タイミングよくこの町内でおなじ内容の詐欺電話が頻発している旨の電話があった(0120110198)のでここでも通報しておいた。この警視庁の担当者の話では、キャッシュカードが偽造されているので新しいカードに交換するといって古いカードを取りにきてニセのカードとすり替えるという新手の手口だそうだ。そのときに暗証番号を聞くらしい。つまり、家までやってくることになる。なんとも気持ちの悪い話である。
頑なに拒否しておいてよかったのだ。

我が家の固定電話は留守電と非通知着信拒否にセットしてあるので、これまでは詐欺電話は回避していた。ところが今回の電話は非通知ではなく、番号が通知されていたので着信してしまったのだ。その番号というのが普通の電話番号とは思えないようなものだったのだ。それは"32481020926"という番号だが、受話器を取るときヘンだなとは思ったが受けてしまった。今後は注意しなければならない。早速、電話機にこの番号の着信拒否を設定した。警察の話では、海外の電話局をインターネット経由で遠回りしてくるケースも多いそうなので、その種の番号かもしれない。

それにしても、年間数百億円の被害がでていて一向に減らないというのは異常である。最近は振り込み型から手渡し型のような直接現金を奪う手口に変質している。さらに、ここひと月の間には強盗として押し入り、殺人まで犯すケースが急増している。この場合は「アポ電」といって、ターゲットに対して息子や孫を装って現金の有無や金額、いま一人か、など生活状況を尋ねる電話のあとに直接押し入るという悪質な手口である。
まったく恐ろしい話だが、日本はいつの間にこんな泥棒天国になり下がったのか。昔の泥棒は唐草模様の風呂敷包みをしょってほうっかむりをしたドロボウひげの男が典型的なイメージだったが、いまはそんなユーモラスな風情はない。下手をすると強盗に早変わりして命まで奪われかねない。

とにかく、自分の身は自分で守るしかない。少なくとも怪しい電話には絶対に出ないことや、そのような情報はマメに警察に報告しておくことが必要だ。
(2019.03.06)