つい半世紀前ごろまでは、食品を包むために紙はもちろん竹の皮、経木、藁などが使われていた。すべて天然の植物を加工したものである。そのころは食品は多くが量り売りされていたので、その都度ほしい量を包んでもらっていた。毎日の食材購入のほとんどは個人商店で、店のオヤジさんなどが手際よく包んでくれた。そして、それを持参の買い物カゴや袋にいれて持ち帰っていた。
そのうち、スーパーマーケットなどの量販店が進出してくると量り売りよりもパック売りが主流となってきた。あらかじめ一定量の品物をプラスチック製の容器にいれて並べることで、大量に効率よく売ることができるようになった。買うほうも必要なものをどんどんカートに放り込んでレジで一括支払いを済ませることで買い物の効率がよくなり、しかも、レジ袋といわれるビニールの袋をくれるので、手ぶらで買い物に出かけられるようになった。いま、このレジ袋はスーパーだけでなく、あらゆるところで使われ、毎日おびただしい量が消費者に配られている。
このレジ袋なるものがけっこう便利なしろもので、ちょっとしたものを運んだり、ゴミ捨てなどには欠かせないものだ。それがいま、目の敵にされている。なぜかというと世界中でプラスティックごみによる公害が大きな問題になっていて、とくに海洋汚染がひどいから、という。海に流出したプラスティックごみは海洋生物に悪影響を及ぼすともいう。水鳥やウミガメ、クジラなどがプラスティックを飲み込んでしまって命を落とすというのである。だからそんなプラスティックがあるのがけしからん、そんなものは製造するな、というのが動物愛護と環境保護という名のもとに活動する団体の言い分なのだ。しかし、直接悪いのはそのようなプラスティックを海に大量に捨てた人間だろう。不法投棄である。
そっちを取り締まるのが先決だろうと考えるが、そういった活動家はプラスティックというモノが悪いから作るな、使うなとヒステリックに主張するのだ。こんな主張に呼応して、デンマークではストローをプラスティックから紙製に切り替えたという報道があった。日本ではそれをマスコミが
大絶賛して、ヨーロッパではすでに環境問題に対応している、といった論調で大々的に報じた結果、飲食店などでは一時期プラスチックのストローが姿を消した。「環境問題に配慮して・・・」などという掲示がされていたが、別に代替えのストローがあるわけでもなく、ただ撤去しただけである。なにをやっているのかさっぱりわからない。単に環境問題の世間体を気にしてのことだろう。やることが姑息だ。
そんな環境問題の流れで、日本ではレジ袋を有料にするという施策が来月から施行される。有料化することで消費量を抑える抑止効果を狙ったものだ。一部のスーパーなどでは以前から実質有料のところはある。レジ袋不要と言えばその分値引きしてくれるのだ。つまり、ちょっと安くなるので買い物袋を持っていくことで、レジ袋の消費量を減らせるという理屈だ。しかし普段はレジ袋代は暗黙の裡に徴収されているのである。
今回の施策はレジ袋の値段を明示して、タダと思っていたレジ袋にお金を出すくらいなら買い物袋を持参しよう、という行動を期待してのことだろう。たしかに、行きつけのスーパーでは施行前の現在でも自前の袋を持っている人が目につくようになってきた。しかし、いつも買い物袋を持っているとは限らず、店舗の状況にもよるがそんなに大きく変わらないのではないか。個人的には便利なレジ袋を有効に活用しているので1枚3〜5円程度の上乗せは容認する考えだし、別に販売していればそれを購入するつもりだ。ところが、今回の有料化で対象となるレジ袋は同じようにゴミとなるプラステック製品全体のわずか1%に過ぎないというのだ。ほかのものはどうするのか。プラスティック問題は本格的に取り組むと影響する産業分野が膨大なので、とりあえず手を付けやすく、反対も少なそうな一般消費者にしわ寄せして、「環境問題に取り組んでいますよ」というポーズでお茶を濁そうとする算段が見え見えである。もっと言えば、アリバイ作りだ。もうひとつ言うなら、これを利権として金儲けをする奴が必ずいるということだ。
(2020.06.24)
|