連日、明けても暮れてもコロナ、コロナと鬱陶しい限りだが。。。
本来、コロナ(太陽コロナ)とは、太陽表面に近い大気層の最も外側にある希薄なガスの層のことを言うらしい。普段はコロナの下にある光球や彩層という大気層から出る光(いわゆる太陽光)が強いため見ることはできないが、皆既日食のときには太陽光が遮られるためにコロナが肉眼で見ることができるようになるのだ。
それは、欠けてゆく太陽が暗黒の空に吸い込まれる瞬間にその周りに輝く放射状の光として現われる、きわめて美しく壮麗な光景である。
語源のcoronaとはラテン語で「冠」という意味で、古代ギリシャ語での「リース」を意味する言葉に由来するという。いずれも周りが装飾された輪っか状のものということで、この天体ショーにふさわしいネーミングである。このように、コロナは皆既日食のハイライトとして、また極めて美しいものとして認知されているのだ。
ところがその形状が似ているせいで、いつの間にか、よりにもよってウイルスの名前に使われてしまった。もともとはコロナ状ウイルスとでも言ったのだろうが、言葉というものは短縮されるのが世の常で、コロナウイルスとなり、今回の新型コロナウイルス騒ぎでいまや単に「コロナ」とか「コロナ禍」、「コロナ需要」、「コロナ倒産」などと使われだしている。これからも「コロナ何々」が増えてきて、コロナといえばウイルスの代名詞として定着してしまうだろう。
しかし一方で、コロナの美しさにあやかって、それを社名や製品の名前にしてきた人達にとってはとんだ災難だろう。昔からよく知られているのは暖房器具などを製造している株式会社コロナや、長い間日本の自動車の発展の中心にいたトヨタの乗用車コロナだ。ただ、トヨタはコロナというモデルをすでに終了していたのは幸運だったというべきか。
いずれにしても、世間ではもはやコロナはウイルスということになり、お株を奪われた格好の天文学の世界でも身内では「コロナ」が通じても、一般向けにはきちんと「太陽コロナ」と言わなければ通じなくなるかもしれない。
(2020.06.30)
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