叡山電鉄 2018.07.17
京都の東端を走る叡山電鉄に行ってきた。この鉄道は叡山本線と鞍馬線という2つの路線を持つ、全長14.4kmの電気鉄道である。
叡山本線は1925年(大正14年)に京都電灯会社が直営する「叡山鉄道」として開業した。一方の鞍馬線は昭和初期に「鞍馬電気鉄道」によって開業した。その後、両線とも京福電気鉄道に引き継がれ運営されていたが、1986年(昭和61年)に経営分離によって、新たに発足した叡山電鉄に譲渡され、さらに1991年(平成3年)京阪電鉄の100%子会社となって現在に至る。
この鉄道の沿線には洛北の名所が多く点在しており、沿線住民の生活路線のほか観光路線としての役割はもちろんだが、一方で比叡山の山麓や鞍馬山に向かうことから、急勾配の線路が連続する山岳路線としての顔も持ち合わせているのが特徴である。このような山岳路線を持つ鉄道会社6社が「全国登山鉄道‰(パーミル)会」という団体を作っており、叡山電鉄もその一員となっている。実はこれまで他の5社の山岳路線には訪れていたのだが叡電だけが残っていたのである。
そんなわけで、念願の叡電の山岳路線っぷりを体験するために、こともあろうに連日38度を超える酷暑のなか、京都の町を徘徊することになった。まずは、JR京都駅に降り立ち、叡電が推奨するJR奈良線・京阪本線経由ルートで叡電の起点である出町柳駅に向かう。

叡山電鉄は叡山本線(出町柳駅-八瀬比叡山口駅)と宝ヶ池駅で分岐して鞍馬駅に向かう鞍馬線があるが、すべての列車は出町柳駅発で運転される。一部の列車は出町柳駅と二軒茶屋駅間の区間運転を行っている。

出町柳駅 正面が叡山電鉄側の入り口で、左方に京阪電車の入り口がある。京阪は1989年にそれまで三条駅までだった本線を延伸する形で鴨東線として三条-出町柳間2.3kmを開業した。これにより叡山電鉄の利用客数は飛躍的に伸びたという。

ホームは4面3線で乗り降りが分離されている。右から1番乗車ホーム・降車ホーム・2-3番乗車ホーム・降車ホーム。旧駅舎の古い寺院風の屋根が目を引く。

1番のりば 八瀬比叡山口方面 700系731号車(ノスタルジック)

2番のりば 鞍馬方面 二軒茶屋行き区間列車 700系721号車

3番のりば 鞍馬方面 鞍馬行き列車 800系815-816編成 
修学院車庫
修学院駅に隣接する車庫にはバケモノみたいな電車がいた。最近、観光用としてデビューした「ひえい」で、732号車を改造したものである。正面に楕円形の巨大な金色リングをはめ込み、側面窓も楕円形で統一したきわめて異形の電車だ。視界確保のため運転席を30cmほど中央寄りにずらしたそうだ。
宝ヶ池駅 叡山本線から鞍馬線がここで分岐する。

叡山本線側 700系731号車

鞍馬線側 800系815-816編成
二軒茶屋駅

二軒茶屋駅 区間運転の終点 700系721号車

二軒茶屋から鞍馬駅までは単線となる。区間列車はこのポイントを使って折り返す。
山岳区間 
 二軒茶屋駅を過ぎるといよいよ急勾配・急カーブ・橋梁・トンネルが連続する山岳区間となる

さっそく33.33‰の勾配が現れた 二軒茶屋-市原

この路線の最大勾配は50‰(パーミル)
二ノ瀬-貴船口
このほかにも数か所ある。

市原-二ノ瀬

市原-二ノ瀬 時速40㎞制限

「もみじのトンネル」として有名な区間。線路際には紅葉時期にライトアップするための照明設備が並んでいる。市原-二ノ瀬

全体にこのような急カーブが多い 貴船口-鞍馬

二ノ瀬駅で上下線のすれ違い交換 800系 801-852編成

貴船口(きぶねぐち)駅 貴船神社最寄り駅で乗降客が多い

鞍馬川を渡る鉄橋 貴船口-鞍馬

唯一のトンネル 貴船口-鞍馬
鞍馬駅

ホームは1面2線構造 900系きらら 901-902編成

800系 815-816編成

鞍馬駅の駅舎 1949(昭和4)年に開業した寺院風駅舎。「第1回近畿の駅百選」に選ばれたという。

鞍馬弘教の総本山鞍馬寺の山門 本殿金堂へはここからケーブルカーに乗る
八瀬比叡山口駅

3面2線のホーム構造 レトロ調のアーチ型の天井をもつ。700系723号車

開業当時(1925・大正14年)からの木造駅舎が残る
ここから比叡山頂へは、ケーブルカーとロープウェイを乗り継いで行くことになる。

駅の近くを流れる高野川の清流 この流れが出町柳付近で賀茂川と合流する
車両
叡山電鉄の現用車両は、700系・800系・900系の3系列がある。すべての車両は電動車。
軌間:1435mm 電気方式:直流600V架空電車線方式
系列 形態 車番
700系 両運転台 711・712・721・722・723・724・731・732(ひえい)
800系 片運転台
2両固定編成
801+851・802+852・811+812・813+814・815+816
900系 901+902・903+904 愛称:きらら
900系「きらら」
900系は「紅葉を観るための電車」をコンセプトに1997-1998年に2編成が作られた。
眺望をよくするためにガラスを多用しており、車体の上半分はほとんどガラス張りとなっている。
運転席も天井までガラスで開放的だ。
座席配置は1人掛けの固定椅子のほか、2人掛け回転式ボックスシートや窓向きシートなど多様なレイアウトになっている。
座席は自由席だが、通路は広く、立ち席スペースもあるので混雑時でも立ったまま大きな窓と天窓を通して紅葉などを楽しめそうだ。
また、上部の天窓には電動のカーテンを備えていて、日差しをさえぎる工夫がされている。
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