熊野速玉大社
神仏習合では神と仏を同体と見て一緒に祀るが、仏や菩薩がもともとの本体であり、人々を救うために仮に神の姿をとって現われたとする考え方による。これを本地垂迹(ほんじすいじゃく)説というが、本体である仏や菩薩を本地といい、仮に神となって現われることを垂迹という。また、権現とは、仏や菩薩が仮(権)に神の形で現われたものをさす。熊野三山はこの本地垂迹説により、熊野権現が生まれ、本宮の主神である「家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)」は「阿弥陀如来」、新宮の「速玉大神」は「薬師如来」、那智の「夫須美大神」は「千手観音菩薩」をそれぞれ本地仏とみなした。この三大社の主神を「三所権現」という。

熊野速玉大社は全国の熊野神社の総本宮で、新宮大社とも呼ばれる。「新宮」の謂われは、現在地より南にある神倉山から、西暦71年〜130年の景行(けいこう)天皇の時代に現在地に遷座したために旧宮に対して新宮といわれるという。
主神として熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ;いざなぎのみこと)・熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ;いざなみのみこと)を祀る。そのほかに12柱の神々を祀り、新宮十二社大権現ともいわれる。


大鳥居 扁額には「熊野権現」とある。
神門の巨大しめなわと扁額。「全国熊野神社総本宮」とある。

拝殿。うしろに2棟の社殿が見える。

拝殿の背後の2棟の社殿には主神である熊野速玉大神(右)と熊野夫須美大神(左)がそれぞれ祀られている。因みに社殿の屋根に備えられた交差する2本の木のことを、「千木(ちぎ)」というが、その先端が垂直になっている場合は男神が、水平の場合は女神が祀られている。
八咫烏(やたがらす)神社
八咫烏は熊野神の使いで太陽の化身とされている3本足のカラス。日本書紀によれば、初代天皇の神武天皇が熊野から大和国に攻め入ったときに熊野山中で道に迷い、そのときに天照大神の使いとして道案内をしたのが八咫烏であったと記されている。これを絵文字化した熊野牛王宝印(くまのごおうほういん)は護符として戦国時代から伝わるものだが、護符のほかに起請文(誓約書)を書く紙としても使われ、この牛王符に書いた誓約を破ると神罰を受けるとされていた。
那智大社の社殿前にある八咫烏像
本宮拝殿近くにある八咫ポスト(黒ポスト)。八咫烏像が上に乗っていて、実際に手紙を投函できるというが、郵便ポストが神社境内にあるのと、黒いポストが珍しいという以外はあまり意味はなさそう。

樹齢千年という神木のナギの大樹。
古来より、このナギの葉と牛王符をいただくことが、難行熊野詣でを無事果たす支えとなったという。