東京→東京ぐるっと一周 2013.08.30
東京駅を始点にぐるっと一周して東京駅に戻ってくるような「乗り鉄旅」を企画した。よくある「大回り」に似ているが、JR線だけではなく私鉄線も使って途中下車などもする。日帰りで行けることと、いままで乗ったことのないローカル線を使うことを前提とし、JR身延線と小海線を目玉にしたコースを決めた。

ルート:
東京−(東海道新幹線)−三島−(東海道本線)−富士−(身延線)−甲府−(中央本線)−小淵沢−(小海線)−小諸−(しなの鉄道)−軽井沢−(長野新幹線)−東京
全営業キロ521.9kmで7路線、乗り換え6回

このルートのいいところは車窓から見える山の宝庫を行くことだ。東海道線は富士山、身延線は富士山とひょっとして南アルプスの一部が垣間見えるかもしれない。中央線は甲斐駒ケ岳周辺、小海線は八ヶ岳連峰、しなの鉄道からは浅間山が見えるはずだ。

行程:
路線・列車
8:26   東京 新幹線・こだま639号
  9:23 三島  着
9:32   三島 東海道線・普通(1427M)
  10:04 富士  着 乗り換え5分
10:09   富士 身延線・特急ワイドビューふじかわ3号
  11:59 甲府  着
12:20   甲府 中央線・普通(533M)
  13:06 小淵沢  着
13:14   小淵沢 小海線・普通(229D)
  15:32 小諸  着
16:16   小諸 しなの鉄道(2656M)
  16:40 軽井沢  着
17:24   軽井沢 長野新幹線・あさま540号
  18:32 東京  着
小諸までは乗り継ぎ時間がいずれも短く、乗りっぱなしになる公算が大だが、この行程を基本に現地で適宜調整しながら行くこととなった。なお、時間が合えばオプションとして、軽井沢駅−(JRバス)−横川駅−(信越線)−高崎駅−(新幹線)−東京駅のルートも考慮した。

なお、この行程の場合すべてがJR線ではなく、第三セクターのしなの鉄道が間にはいるので、東京−東京間の連続切符が買えない。JRの窓口で相談したら、小海線佐久平駅で新幹線に乗り継ぐことにすれば連続になるという。新幹線の佐久平−軽井沢間は実際には乗らないのだが、その間を小海線としなの鉄道で迂回する形になるのだ。その代り、小海線佐久平−小諸間と、しなの鉄道小諸−軽井沢間は別途運賃を払うことになる。このような方法はJRの割引切符を買う時に応用できるだろう。

さて、東京発こだま639号で三島に向かう。「こだま」に乗ることはあまりないが自由席でらくらく座って出発した。しかし、新横浜駅でほぼ満席となった。三島駅まで1時間弱。東海道本線に乗り換える。三島始発で富士駅まで30分強。沼津駅までは通勤・通学客でかなりの混雑だが、その後はガラガラになった。
富士駅で身延線に乗り換えだが、その乗り換え時間が5分とあって緊張の態だった。ホームの階段を駆け上がって連絡通路を身延線ホームに走るが、まだホームには特急ワイドビューは入線していないのを見て安堵する。
やがてJR東海の373系3両編成の特急「ワイドビューふじかわ3号」が入線する。この列車は、静岡駅始発で富士駅から身延線にはいるのだ。身延線は富士駅の西側で東海道本線に合流・分岐している。そのため、列車はいったん当駅にはいってからスイッチバックして身延線に乗り入れる。座席の向きは東海道本線内では後ろ向きで、身延線にはいって前向きになるようセットされている。1号車に乗りこむとほぼ満席の状態だ。先頭車両なのでカブリツキも期待できる。

運転席後ろからのカブリツキ。甲斐大島−身延間。遠方の山は身延山(1153m)で、山麓の久遠寺と山頂の奥の院を斜長1665m標高差763mのロープウェイで結んでいる。(うっすらと確認できる)
JR東海の身延線は富士駅−甲府駅間88.4km、全線電化で富士−富士宮間は複線、富士宮−甲府間は単線となっている。全線にわたって富士川の左岸にそって走る山岳路線である。前身は富士身延鉄道で、東海道本線と中央本線を結ぶのと、沿線の日蓮宗総本山の身延山久遠寺への参詣客を運ぶために建設された。
身延線に乗るのは初めてなので、本来であれば身延駅で下車して身延山久遠寺に参詣したいところだが、時間がない。次の機会にしたい。この路線は富士山の西側を走るので側面の富士山の姿を期待したが、前日までの雨の影響があってか富士山周辺だけが雲が低く見えなかった。しかし反対側の車窓には富士川が見え隠れし、遠方には山も見える。線路は勾配やカーブが連続し、頻繁にトンネルにはいる。このため、特急列車とはいってもそれほど速度が速いこともなく、駅に停まらない分早く着くということだ。甲府駅までの所要時間は1時間50分かかるが、特急ふじかわは1日に7往復運転されており、この日も平日で満席になっている通り利用者は多いようだ。

甲府駅の1番ホーム。右奥に身延線のりばの4番・5番ホームがある。ホーム上に大書された身延線の文字と大きな案内板が目立つ。
甲府駅では20分の待ち時間がある。といって下車するほどではない。昼どきなのでホームの売店で軽食を購入し、車中で食べることにした。
中央本線は東京駅起点で塩尻駅までは中央東線とも呼ばれ、JR東日本管轄である。
甲府駅はそのほぼ中央に位置しており、新宿から120kmの距離にある。近年「スーパーあずさ」や「あずさ」、「かいじ」などの特急列車が1日30往復運転されるようになって、新宿まで1時間半で行けるため、東京都心との人の往来が活発になっているという。

特急「かいじ」E257系
入線してきた小淵沢行き普通列車。古参の115系電車。この塗装の車両はJR東日本長野総合車両センター所属だ。
ここから小淵沢駅まで46分。途中左車窓には甲斐駒ケ岳が見えるのだが、昼間は逆光となるので見えにくいことが多い。この日も地上は晴れているのに逆光のうえ、上空はかすんでぼんやりとした輪郭しか見えなかった。

小淵沢に着くと、待っていたのはハイブリッド気動車キハE200形だ。これはラッキーだった。
キハE200形は気動車とはいっても、動力は電動機(モーター)で、ディーゼルエンジンで発電した電力と蓄電池の電力を使って走る電車だ。電気式気動車という分類だが、2電源方式なのでハイブリッドと言っているのだ。エンジンを直接動力に使っていないので気動車をあらわす「キハ」という記号はヘンだと思ったのかどうか知らないが、JR東日本は新型ハイブリッド車両には「HB」という記号をつけた。観光用車両のHB-E300形が「あすなろ」という愛称で青森を走っている。キハE200形の列車には公募による「こうみ」という愛称がつけられている。

小海線は中央本線の小淵沢としなの鉄道(旧信越本線)の小諸を結ぶ全長78.9kmの路線で全線が非電化単線である。「八ヶ岳高原線」という別名をもつとおり、日本最高所を走る鉄道としてよく知られている。途中の清里−野辺山間には標高1375mのJR最高地点があり、野辺山駅は標高1345mのJR線最高駅である。そのほか、甲斐小泉から松原湖までの9駅がJRの標高の高い駅のベスト9を独占している。
この日、2両編成の列車は満員で小淵沢駅を発車した。右にカーブして中央本線と別れると、すぐに25‰の急坂にさしかかり、早くも高原列車の様相を呈してきた。その後も33‰を登って清里を過ぎ、JR最高地点の踏切を通ると少し下って野辺山駅に着く。満員だった車内は急にガラガラになった。ゆっくり座ってノンビリ高原鉄道の旅を楽しめるようになった。八ヶ岳を見ようと左側のドア付近にがんばっていたが、またしても雲が低く見えずじまいだ。どうもついていない。やはり車窓からでは当たり外れが大きい。列車は快走するが律儀に各駅に停まってゆく。景色は単調だ。今回の行程中、最長乗車時間の小諸までの2時間20分あまりが長く感じるようになった。小海線には珍しい高架駅の佐久平駅を過ぎると人家が増えてくる。やがて右側にしなの鉄道線の線路が近づいてきてしばらく並走した後小諸駅に着く。

小諸駅で小海線の運賃精算と、しなの鉄道の軽井沢までの切符を買いに窓口に行くと電車は間もなく発車するという。あわてて切符を買ってホームに停まっていた電車に駆け込んだ。おかげで、このしなの鉄道の115系電車の写真も撮れずじまいだった。電車が発車してから調べると実は、予定の1本前の電車だったのだ。そこでさらに調べると軽井沢駅から横川駅行きのJRバスに間に合うことがわかった。ただし軽井沢駅に着いてからバス発車までの時間は10分もない。しかしとにかくチャレンジしようということになって急遽オプションの横川ルートに変更した。当初の予定では軽井沢で1時間ほどの余裕を見ていた。ちょっと駅前を歩いて軽井沢の空気でも吸って帰ろうと思っていたのだが。。。


しなの鉄道の電車は30分で軽井沢駅に到着。混雑する駅構内をすり抜けてバスの発着場に急行。ちょっと迷ったりしながらバス停に着くと、すでにバスは満席寸前で危うく席がとれた。このバスは信越本線の横川駅と軽井沢駅の碓氷峠越えが廃止になって以来、代行運転しているもので、1日に8往復運転されている。一度乗りたいと思っていた願いが叶った。バスは国道18号線の碓氷バイパスを通って横川駅まで30分かけて走り、16:55に横川駅前に到着した。
次の横川駅発信越線電車の時刻を確認すると、17:13発高崎行きだ。
昔は、この駅に到着する列車に66.7‰の碓氷峠越えのための補助機関車を連結したり、峠を下ってきた列車から機関車を切り離したりする作業が行われていた。その賑わいが消えてすっかり寂しくなってしまってから久しい。現在は1日24往復ほどの普通電車が行き来するが、ときたま蒸気機関車が引く「SL碓氷」という臨時列車が運転されることがある。
乗車前に駅前にある荻野屋で名物の「峠の釜めし」を買い込む。
横川駅からは107系(100番台)電車だが、1988年に登場したのでかれこれ四半世紀の高齢車だ。JR東日本高崎支社管内の上越線(高崎−水上)、信越本線(高崎−横川)、吾妻線(渋川−大前)、両毛線(新前橋−小山)で運用されている。右車窓に妙義山の奇峰群や安中駅前にある東邦亜鉛製錬所を見ながら電車は約30分で17:45に高崎駅に着いた。

乗り継ぎの新幹線は18:05発2階建てのE4系「MAXたにがわ338号」で、指定席は1階席しか空いていなかった。1階席はいつも敬遠するのだがしょうがない。座ってみるとやはり車窓からのながめはひどい。線路際の防護壁にさえぎられて地下鉄のようだ。もう暗くなってきたのと1時間弱の乗車なので我慢するが、指定料金なしでもいいくらいだ。JRでは東北・上越新幹線の高速化のために、来年(2014)夏から2階建て車両のE1系とE4系を順次引退させ、5年後をめどに全廃するという。大賛成だ。文句を言っているうちに、もう真っ暗になった19:00。無事東京着。

これにて「東京→東京ぐるっと一周の旅」は終了した。所要時間10時間34分。自宅との往復時間を含めると12時間だ。山は見えず、途中下車できずで完全に乗りっぱなしになってしまった。それでも、バスで碓氷峠越えできたのはアクセントになってよかった。しかしさすがに疲れた。今後はもっと余裕をもってプランすべし、と相棒ともども反省しきりであった。
鉄道総合ページ:「鉄道少年のなれの果て」