東京スカイツリー     2012.05.19現在
東京スカイツリーは東京タワーに代わる放送用の電波塔として着工から4年の歳月を費やして建設された。この場所はもともと東武伊勢崎線の車庫として使われていたもので、車両基地が遠隔地に整備されるのに伴って縮小されることになり、その跡地を新電波塔建設用地として使うことになったのである。新電波塔の誘致には大宮市なども手を挙げていたが、立地条件に加えて事業主の東武鉄道と、地元押上・業平地区の再開発を目論む墨田区などが協力して推進した結果、決定したという。
この電波塔は自立鉄塔としては世界最高の634メートルだが、当初から世界一を目指して当時世界一の中国の広州タワー(600メートル)を凌ぐ610メートルにしたが、その後ほかの国にも建設予定があることを聞き及んで急遽634メートルとした。根拠は634(むさし(武蔵))という語呂合わせで、高さを決めるなどというのは案外いい加減なものかもしれない。

  東武特急スペーシアとともにスカイツリーは東武鉄道のシンボルとなった。



浅草吾妻橋から見る。左は墨田区役所、右はアサヒビール社屋 。


スカイツリーの周辺には「東京ソラマチ」という観光・商業施設ができた。内部にはショップ、レストラン、プラネタリウム、水族館などのほかにオフィス階もある。
東武では年間3200万人の来場者を見込んでおり、このような観光・商業施設や周辺の商店街で売られる商品によって波及するものも含めて年間1700億円の経済効果を見積もっている。これを維持向上させるためにはリピータをいかに増やすかが課題とされている。たしかによほどのマニアでなければ、一度行けばそうそう足を運ぶようなものではないだろう。ほとんどが一見さんなのだ。


根っこの部分から仰ぎ見る。微妙にねじれているのがわかる。これは基礎部分が三角形で、上に行くに従って円形になっているためという。

展望回廊。地上450メートルで、ガラス張りのらせん状の展望台。床の一部に透明ガラスが張ってあって下界が直下に見下ろせるという。高所恐怖症にはちょっと無理。
   
地上350メートルの展望デッキ。この部分ですでに東京タワー(333メートル)よりも高い。土産物店やレストランなどが併設されているのは東京タワーと同じ。


ゲイン塔
このスカイツリー本来の役割である放送電波を発射する送信アンテナを設置してある部分。ここからNHKと在京6社の民放の地上ディジタルテレビ放送(運用は2013年1月以降予定)やNHK-FM、J-WAVEのFM放送電波(すでに運用)を送信する。そのほかにタクシー無線中継基地局が移転してきている。
このゲイン塔だけで4トンの重量があるという。頭でっかちだが大丈夫だろうか、とはシロウトの老婆心。
 そばを流れる北十間川。すっかり整備されて親水公園に生まれ変わった。



264メートル当時のほぼ同じ場所
(2010.01.14)
 開業(2012.05.22)を3日後に控えてのプレオープンのイベント。地元の町内会の神輿が繰り出して下町の雰囲気を盛り上げる。
地元の押上、業平のほか周辺の多くの町内会が参加しているようだ。関係者が着ているはっぴの背文字からでも、本所、吾妻橋、太平、向島、横川、東駒形などが確認できた。
 
神輿は丁目ごとにあるらしく、かなりの数になると思われる。出動の順番を待つ神輿と担ぎ手たち。
 
スカイツリーの真下を走る東武鉄道の電車。
東武はこの大事業に因んで路線名や駅名をスカイツリーづくしにしてしまった。
伊勢崎線を”スカイツリーライン”、業平橋駅を”とうきょうスカイツリー駅”といった具合である。江戸や古い東京、下町などを演出するにはいささか不似合のような気もする。たしかに東武鉄道にとって、本線の伊勢崎線が浅草駅発着というハンディを負って、なかなか発展できずにいたところへの、千載一遇のビッグチャンスだったのかもしれない。しかし、この巨大な鉄塔の認知度は最強である。部外者のお節介ながら何も路線名や昔からの由緒ある駅名を変えなくても、と思うのだ。
5月22日の開業以来、連日予想を上回る来場者が押しかけていて、順調な滑り出しという。それはそれで結構な話だが、その一方で地元の商店では一部の有名店を除くと、大幅な減収になっているという。併設施設内で観光や飲食、買い物を済ませてしまい、地下通路で直結している駅を利用するので外に出てこないことが理由だが、このようなことは大型商業施設ができればどこでも起きる現象である。これまでも多くの事例があって地元商店街がさびれ、その地域の活力も落ち込んできた。地元から見れば、よそ者が入り込んできて占領されたのも同然である。さらに悪いことには、ここでは一部の不埒な連中による不法駐車、不法駐輪、ゴミの不法投棄、個人宅やマンション敷地への不法侵入や夜中に大声で騒ぐなどの悪質な迷惑行為が後を絶たないという。住民にとってはなにも良いことはない。そもそも住宅密集地に隣接して建設したことがこうした事態を引き起こしているわけだが、要するに電波塔だけでよかったのである。余計な複合施設などを造ったためにいろいろな問題が起きることになる。立地環境は違うが、電波塔だけでやってきた東京タワーはいまでも人気は衰えていないという。そろそろ住宅密集地でのこうした施設の建設にあたっては客寄せ一辺倒ではなく、地元の商売人やそこに住む住民に配慮した方策に転換する必要があるのではないか。そうでなければ人は流出し、町はシャッター通りとなってさびれてゆく一方である。(2012.05.27)

 浅草・吾妻橋からの夜景 2012.09.20