アメリカンな鉄道風景 |
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動画サイトYouTube上にLIVEサイトというものがある。人の集まる街なかや空港のスポット、鉄道駅や線路際などに据えられたカメラが捕らえた映像を四六時中ストリーミング配信しているのだ。いわば監視カメラの映像をそのまま垂れ流しているようなもので、プライバシー問題も起きそうだが、いまのところYouTube側の倫理規定には抵触していないようだ。 これらのサイトのうち、とりわけ面白いのがアメリカの鉄道LIVEサイトだ。アメリカの長距離鉄道は旅客列車はいまいちだが、貨物列車は凄い。なにしろ、超でかい車両!超パワフルな二重連・三重連の機関車!100両を超えるような超長い編成!そして警笛が超うるさい貨物列車が頻繁に行き交っているのだ。まさにアメリカンな光景が展開している。アメリカの鉄道好きたちが立ち上げているサイトでは、爆走するリアルの列車たちが映し出されている。世界中の鉄道ファンが視聴しているようだ。チャットも活発で、マニアックなやり取りも多い。試みに”Hello! I'm watching from Tokyo”と参加してみたら、すぐに”Hello Tokyo”とか”I have been in Tokyo, stayed in Akihabara for long time. I love your city!”などと返ってきたのには驚いた。 サイトはたくさんあるが、そのうち以下のサイトが興味深い。いずれもアメリカンな雰囲気が十分伝わってくる。 (各タイトルにライブサイトのリンクを張っていますが、変更されることがあるのでご承知ください) ■ケンタッキー州ラグランジュ(La Grange,KY)
La Grangeという町は調べてみたら、1827年ごろにフランス人によってつくられ、1840年に正式にケンタッキー州に統合されたとある。人口は8700人ほどの町だが、ほかにないような珍しいものがあるというのだ。それは町のメインストリート上にCSX鉄道(米国の一級鉄道貨物輸送会社)の本線の線路が敷かれていて、そこを1日に30本もの長大な貨物列車が通過してゆくという。このような例はほかにはカリフォルニア州オークランドにあるだけで、ラグランジュの市民としてはこれが自慢らしく、カメラを設置してLIVE配信しているのだ。見ると、目抜き通りらしいが、さほど広くもない道路の真ん中に単線の線路が敷かれていて、そこを重連のディーゼル機関車に引かれた長大な貨車の列がゆっくりとやってくる。機関車は3重連のときもあるし、後部補機として2−3重連、さらに驚くことに中間にも2重連の機関車を挟んでいたりする編成もある。いったい何両くらいの貨車をつないでいるのか、カウントしてみたが途中でイヤになってしまったが、100両を超えるのは普通のようだ。街なかなので警笛は制限されているらしく、粛々と通り過ぎてゆく。その間、町は完全に分断される。チャットによると長いときは15分くらいは踏切が閉まりっぱなしのときがあるといい、そのため交差する道路上には長いクルマの列ができるが、それでもドライバーたちは辛抱強く待っている。日本でも開かずの踏切がいくつもあるが、それらは線路が多くて何本もの列車が並走していることや、運転間隔が短いからで、単線で15分も踏切が開かないなどということはほとんどない。
■ミズーリ州ラプラタ駅(La Plata,MO) ラプラタ市はミズーリ州北部のメイコン・カウンティのさらに最北にある人口1300人強の小さな町らしい。1855年に設立されたのち、1856年にはWabash鉄道が通じ、20年後にはシカゴとカンザスシティを結ぶSantaFe鉄道が通ることになったという。現在は最大の大陸横断鉄道であるBNSF(Burlington Northern Santa Fe)鉄道がシカゴとロサンゼルスを結んでいる。BNSFは鉄道貨物会社だが、Amtrak(アムトラック;全米鉄道旅客公社)がBNSFの線路を借りてシカゴ−ロサンゼルス間の旅客列車を運行しており、ラプラタ駅に停車して旅客サービスを行っている。
このラプラタ駅の駅舎にカメラが据え付けられていて複線線路とホームの一部の様子をライブ中継している。なんの変哲もないのどかな風景が広がる。通過する列車は1日に70本ほどと言うから、かなり頻繁に走っているが、そのほとんどは貨物列車であり、Amtrakの旅客列車は1日1往復だけで、年間9000人ほどが利用するらしい。貨物列車は、コンテナを二層に積み上げたダブルスタッカーやトレーラーを乗せたトレーラーピギーバック、オートラックス(Auto racks)という自動車を2層または3層に乗せた背の高い有蓋車などの巨大な貨車が優に100両を超えるような編成で、いずれもかなりの速度(70〜80mph;120km/h前後)で思いっきり警笛を鳴らしながらすっ飛ばしてゆくさまが圧巻だ。 発着するAmtrakの旅客列車は”Southwest Chief”と呼ばれ、19:51発のロサンゼルス方面行きと、9:55発のシカゴ方面行きだが、到着する2時間くらい前から乗客たちが集まってくる。出迎えの人もいて普段閑散とした駅はほんのひとときにぎわう。時々ではあるが、目につくのがこの地域に住んでいるというアーミッシュ(Amish)の人たちだ。クルマ利用が多いようだが、馬車に乗って駅にやってくるのを見たことがある。男女とも黒ずくめの長い衣裳をまとった姿は、比較的ラフな服装のほかの人々とはまったく対照的だ。 この駅のプラットホームは極めて短く、客車2両分くらいの長さしかない。列車は当然ホームからは大きくはみ出るわけだが、どのように乗降するかというと、乗降客がいる客車のドアがホームにかかるように、その客車担当の車掌が運転士に無線で指示して列車を少しずつ移動させるらしいのだ。場合によっては2回3回と動くこともあり、ときには行き過ぎてバックしたりする。なんとものんびりした光景だ。またホームは客車の出入り口のステップよりも低いため、車掌が黄色いプラスティック製の踏み台を置いて乗客を乗り降りさせている。大雑把でバリアフリーなどという感覚は皆無である。これもある意味アメリカンスタイルなのだろう。
■バージニア州アッシュランド(Ashland,VA) アッシュランドは州都リッチモンドに近い人口約7200人の町ということだが、ここにはアッシュランド鉄道駅がある。 ライブカメラはこのアッシュランド駅とその周辺をカバーしている。この線路にはAmtrakの旅客列車とCSX鉄道の貨物列車が通る。
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