蘊蓄・鉄道コラム
ご長寿電車

岐阜県の揖斐町と三重県の桑名市を結ぶ養老鉄道では、このほど老朽化に伴う車両の更新を発表した。15両の車両を入れ替えるというものだが、その新型車両というのが、なんと!東急電鉄の7700系電車なのだ。日頃よく利用している池上線を現役バリバリで走っている電車だが、東急電鉄では最古参の電車なのである。7700系は1960年代に作られた7000系(先代)を改造して1987年に新形式として登場し、かれこれ50年の車歴をもつ。7000系と言えば、日本初のオールステンレス車体の電車として、1962年に東横線に登場し、斬新なデザインや台車の外側についたディスクブレーキが目立つ車両だった。のちに営団(現・東京メトロ)日比谷線との相互乗り入れ用として活躍した。しかし、冷房化にあたって車体を除く大幅な改造を行うことになり、主制御器をはじめ、駆動装置、台車、主電動機、補助電源装置、ブレーキ装置、運転操作機器などを室内改装とともに一新し、新形式7700系としたのである。ただし、車体については冷房機を搭載するために骨組みを強化したのみで、オールステンレス構造には手を入れていない。これは、7000系として作られてから四半世紀以上経過しているものの、構造上にまったく劣化がなく、ステンレス車体の強靭性が実証されていたからである。つまり、7700系は、その当時開発されていた9000系や1000系などに採用されたインバーター制御やボルスタレス台車など最新技術を積極的に取り入れ、ハコは古いが中身は最新の電車として作られたのである。それからおよそ30年が経ち、いまでも元気に走っていたのが、突然白羽の矢を立てられ、新しい任地へ赴くことになったのである。

養老鉄道では、導入する7700系電車を2019年2月〜3月に営業運転開始し、今後30年使う予定という。そうなると7700系電車は80年以上も働き続けるわけで、伝説的な長寿電車となることは必定である。生み出した東急電鉄としてもステンレス車を初めて採用し、いまもって新しいステンレス電車を開発し続けており、長持ちするステンレス車体への先見の明には面目躍如たるものがある。

地元の電車として、つい最近まで乗っていた7700系は間もなく池上線・多摩川線から姿を消す。まことに寂しい限りだが、新天地ではまさに「養老鉄道にご長寿電車来たる!」ということで、歓迎されるだろう。
おめでたい話である。

2018.08.29


7903F 石川台−雪が谷大塚
歌舞伎塗装の7913F 雪が谷大塚−石川台
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