塩船観音寺

東京都青梅市にある、真言宗醍醐派の別格本山で「大悲山塩船観音寺」と号し、大化年間(645〜650)に若狭の国の八百比丘尼(やおびくに)が千手観音像を奉安したことに始まるといわれる。塩船の名は天平年間(729〜749)に来山した僧行基(ぎょうき)が名づけたもので、周囲が小高い丘に囲まれた地形が船に似ているところから、弘誓(ぐぜい)の船(仏が衆生を救い、彼岸に導くことを船に喩えた表現)になぞらえての命名という。
平安時代の貞観年間(859〜877)になって僧安然(あんねん)が観音堂を再興し、さらに阿弥陀堂、薬師堂など12の坊舎を建立して隆盛をきわめたと伝えられる。

当山は本堂、仁王門、阿弥陀堂が国の重要文化財であるほか、本尊千手観世音菩薩像などが都有形文化財に指定されており、重要な文化財が数多く安置されている。
近年は、つつじの名所としてとくに名高く、ほかにあじさい、やまゆり、ひがんばな、はぎ、なども植えられていて、「東国花の寺百ヵ寺」の第十三番に指定されている。(参考:「江戸東京の古寺を歩く」)

つつじで有名なお寺だが残念ながら季節的に合わなかった。しかし、植え込まれているつつじの群生は咲いたらさぞかし見ごたえがあるだろうと想像できる。
なんといっても印象的なのは、萱葺き屋根の堂宇である。まことに青梅の山中のお寺にふさわしい風情を醸し出している。昨今、コンクリート造りのお寺が多いなか、萱葺きという、それだけでもありがたみを感じる。このようなお寺はぜひ大事に保存してもらいたいものである。
(2005.09.04)


正面入り口
”国宝塩船観音”という石柱が建っているが・・・?国宝指定物はないはず

仁王門
国重要文化財

左右に金剛力士像(都有形文化財)が安置される。
「大悲山」の山号扁額がかかる。

参道
奥に阿弥陀堂がある。

阿弥陀堂
国重要文化財
堂内には「阿弥陀如来」、「聖観音」、「勢至菩薩」の三尊像(いずれも都有形文化財)が祀られている

室町末期の建立とされている。
ここだけは萱葺き屋根になっていない。

薬師堂

薬師堂堂内
平安末期の造立とされる木造薬師如来像(中央)を安置する

弘法大師堂
薬師如来(右)と弘法大師の石仏を祀る。

「奥多摩新四国霊場五十九番」の札があるが、「関東八十八ヵ所霊場」の第七十二番札所でもある。

鐘楼
寛永18年(1641)鋳造の銅鐘がさがる。

観音堂(本堂)
国重要文化財
室町末期の建立とされる。苔むした屋根が独特の風情を感じさせる。
本尊秘仏の「千手観世音菩薩像」(都有形文化財」が奉安される。造立は文永元年(1264)。

本堂の扁額
「圓通閣」

護摩堂「弘誓閣(ぐぜいかく)」(右)と「普門閣」(左)
うしろの斜面一面につつじが植え込まれている。

大スギ
都天然記念物
胴まわり7メートル、樹高39メートルある。
ヤマユリ
阿弥陀堂横のサルスベリ(百日紅)

このあたりは巨木が多い。
コスモス(秋桜)も咲いていた
塩船観音寺のつつじ