近畿日本鉄道(近鉄)は大阪府、京都府、奈良県、三重県、愛知県の2府3県にまたがる路線網を持つ大手私鉄で、路線の総延長距離は約500kmと全国私鉄中最長である。したがって路線数も多く、標準軌路線(1435mm) 16、狭軌路線(1076mm) 5、特殊狭軌路線(762mm) 2で、合計23路線を有する。1910年(明治43年)9月に奈良軌道として設立され10月には大阪電気軌道(大軌)に改称し、生駒トンネルを難工事の末に完成後、1914年に上本町〜奈良間(現:近鉄奈良線)を開通させたのが発祥である。その後、天理・橿原神宮、伊勢方面にも路線を伸ばし、1938年には名古屋までのルートを確立した(現:近鉄名古屋線)。さらに周辺の鉄道会社をつぎつぎに合併・統合し1965年には現在の路線網がほぼ完成した。
奈良県、三重県下ではとくに近鉄の勢力が強く、競合する国鉄路線をスピード、サービスの面で圧倒してきた。国鉄がJRになってからは、多少向上しているものの、現在でも近鉄が依然として有利な状況が続いている。
近鉄は当初から豪華仕様の専用車両による有料特急列車の運転に力を入れており、その使用車両には「アーバンライナー」、「ビスタカー」、「伊勢志摩ライナー」、「さくらライナー」、「ACE」などの愛称がつけられ、種類も多い。

今回、奈良を訪れたので、大和西大寺駅を中心に近鉄の各車両を見てきた。大和西大寺駅は、奈良線、京都線、橿原線が合流、分岐する要衝の駅である。難波〜奈良、京都〜奈良、京都〜橿原神宮および京都〜賢島間の列車はすべて当駅を通ってそれぞれの方向の線路に向かう。そのための線路は交差し分岐しなければならない。ここ大和西大寺ではそれを平面交差での複雑なポイント構造でやっている。実際それを目の当たりにすると、度肝を抜かれる。

なにしろ、奈良線本線の複線線路を橿原線下り本線が斜めにまっすぐ横切っているのである。ここでは、大阪(難波)からの奈良線と、京都からの京都線が合流する。そして奈良方面と橿原神宮方面に分岐する。奈良方面はそのまま直進すればいいが、橿原神宮方面は右側(南側)に曲がってゆかねばならない。複線であるから必然的に上り線を横切ることになり、このような形になるのである。おまけに大阪からも京都からも奈良、橿原神宮に行けるようになっているし、逆も可である。このためにポイントはきわめて複雑な構造になっているうえに、車両基地への入庫線などがさらに複雑怪奇なものにしている。
ここを特急列車が堂々と渡っていったり、複雑な渡り線をくねくねと身をよじらせながら進んでゆく列車の姿は圧巻である。一見の価値がある。電車の運行はかなり密であるが、これだけの複雑なポイント操作を頻繁に間違いなく行っているというのはすごいことである。さすがは私鉄の雄、近鉄というべきか。(2006.03.11)

西大寺分岐線の様子                                               配線図
大和西大寺駅から見た分岐の様子  右側に行くのが橿原線、左側まっすぐが奈良線奈良方面
大和西大寺駅を発車する橿原神宮行き特急(左)と橿原線から進入してくる京都行き特急(右)
奈良線を横断する特急列車 左は橿原神宮行き22000系 右は京都行き30000系「ビスタEX」
渡り線から奈良線下り線にはいる奈良行き急行9020系
左は奈良線上り列車、右側からも橿原線からの京都行き列車が進入してくる
奈良発快速急行難波行き8600系
橿原線からの京都行き普通列車8400系

近鉄奈良線、京都線、橿原線を走る車両
1233系
難波行き急行
(大和西大寺)
1026系
奈良行き準急
(大和西大寺)
1252系
入庫列車
(大和西大寺)
1252系
橿原神宮行き普通
(西ノ京付近)
3200系
奈良行き準急
(大和西大寺)
5800系
大和西大寺行き急行
(西ノ京)
9020系
「シリーズ21」と名づけられた新型通勤車両。ボディーカラーも一新された。
(西ノ京付近)
8600系
奈良行き準急
(大和西大寺)
8400系
回送列車
(西ノ京付近)
8000系
京都からの当駅どまり
(大和西大寺)
12200系
奈良行き特急
(大和西大寺)
特急用車両22000系
「ACE」の愛称がつけられている。
一編成すべて電動車両で、最高速度130km/hの性能を有する。
橿原神宮前行き
(大和西大寺)
22000系
橿原神宮前行き特急
(西ノ京)
30000系「ビスタEX」
京都行き特急(左)と
1252系回送列車
(大和西大寺)
関連ページ: 「鉄道少年のなれの果て」
近鉄吉野線・京都線
近鉄路線網の妙