ようやく叶った日本中の願い |
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これはもう、日本中が待って待って待ちわびて、やっと叶えられた願いだったに違いない。横綱稀勢の里の誕生である。
長いこと日本中のファンが期待し続け、その都度がっかりさせられてきた、悲願の初優勝をついに勝ち取った。と同時に横綱もつかみ取って、ようやく待望の日本人横綱が復活したのだ。実に3代目若乃花以来19年ぶりというから、なんと長かったことか。それだけにファンのひとりとして心底うれしい。 入幕から15年の初優勝といい、大関昇進から横綱昇進までの所要場所数31場所という記録は最も遅い部類に属する。しかしここ数年、優勝のチャンスは何回もあった。それにもかかわらず、そのたびに星を落として優勝をさらわれるということの連続だったのだ。本人の悔しさはいかばかりだったかと思うが、それ以上に日本中のファンは机をたたき、地団駄踏んで悔しがってきたのだ。それでも、今度こそは。。。と毎回思わせるような不思議な魅力がこの力士には備わっていた。 私が稀勢の里に注目しだしたのは、平成22年の九州場所初日に、双葉山の持つ連勝記録69を目指していた横綱白鵬を63連勝で止めたのが、平幕の稀勢の里だったことからだった。このときの驚きと感動は忘れられない。そして、その3日目から再び連勝記録に挑んだ白鵬を翌場所(平成23年初場所)10日目に関脇になったばかりの稀勢の里が23連勝で止めるに及んで、これは!と感じ入って、いっぺんにファンになってしまった。その後大関に昇進してさらに「止め男」は続く。平成25年名古屋場所13日目には43連勝で止めたのである。それ以来、毎場所のテレビ中継は稀勢の里の相撲だけが楽しみで見ていたようなものだった。実際このころは毎場所準優勝が続いて、いずれは優勝するだろうと思っていた。ところがなかなかチャンスをつかめないのだ。 そのうち、入幕同期の日馬富士が横綱になり、鶴竜までもが横綱になったうえに、後輩大関の照の富士、琴奨菊が初優勝を成し遂げる。この琴奨菊の優勝は久方ぶりの日本人力士の優勝となって、大いに沸いた。これに発奮したのか、稀勢の里は翌場所には再び準優勝をし、いよいよ綱とりをかけて初優勝に挑んだのだが、4場所続けて失敗し、その間に後輩大関の豪栄道に初優勝を持っていかれてしまう。ファンとしてはもうガッカリの連続である。 なぜ、こう何回も失敗するのか。大きな原因は取りこぼしが多いことだ。とくに序盤戦で格下との対戦で考えられないような負け方をすることが多い。その反面、横綱や大関を全員破って結果として準優勝となるなど、堂々たる横綱相撲を見せたりする。取りこぼしさえなければ優勝できたのに、あと一歩というところでチャンスをものにできないという癖があるのだ。だからファンとしては悔しくても今度こそは。。。と毎場所あきらめずに期待してきたのである。 力はあるのにそれを生かせない。稀勢の里の場合は精神的面での弱さを指摘されてきたが、それでも腐らず地道に土俵に上がってきた。多くのファンはこのような姿勢に共感して応援し続けてきたのだ。そして平成29年(2017)初場所で、ついにそれに応えて大願成就を果たした。今場所はこれまでとは違った落ち着きと粘りを見せて毎日の取り組みをこなし、千秋楽結びの取り組みで、白鵬の猛攻を土俵際で耐えて退けた。14勝1敗という成績で初優勝を勝ち取ったのである。 正直なところ、昨年(2016年)の綱取りの期間中、テレビ中継を見るのが嫌になってきていた。いつ取りこぼすかわからないので安心して見られないからだ。取りこぼしの多い対戦相手のときに、これはひょっとすると危ないな、と予感すると妙にその通りになることが多いのだ。自分が呪いをかけているような気がして、最近はテレビを見ないで結果をWebニュースで確認してオフラインで一喜一憂しているような状態だった。だから今場所の14日目に優勝を決めたときも、恐る恐るアクセスした。とたんに「初V!」の文字が目に飛び込んできて「やったァー!」と快哉を叫ぶと同時に安堵感が広がって一気に気分が晴れたのだった。それで、翌日の対白鵬戦はテレビの前で決定的瞬間を見届けたのである。来場所からは、初優勝と昇進という重荷を下ろして、新横綱として堂々たる横綱相撲を見せてくれるに違いない。こちらもテレビの前で安心してオンラインで応援しようと思う。 今回の稀勢の里の横綱昇進を巡って、一回の優勝で昇進させるのはいかがなものか、という指摘がある。規定の優勝回数には満たないものの、これまでの「もう一歩」という準優勝の回数と、昨年の最多勝数を見ればすでに十分な安定した地力をつけていることは、われわれファンの目からも明らかであり、横綱審議委員会と相撲協会がこれらの点を評価して決定したことは正しい判断だったと思う。 ついでに言うが、白鵬以外の2横綱や稀勢の里以外の3大関は安定感という面で課題があると思う。とくに3人の大関は一発優勝という印象がぬぐえない。優勝した時の目を見張るような力が、その後全く影を潜めてしまっている。それどころか怪我やカド番ばかりで、琴奨菊はとうとう大関陥落という不名誉なことになってしまった。来場所以降、残った2大関の奮起を望みたいが、大関を目指す若手も育ってきているので番付も大きく変動するかもしれない。これも楽しみなことだ。 (2017.01.25) |
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