はやぶさ2帰還


2014年12月3日に打ち上げられ、小惑星「リュウグウ」に到達した小惑星探査機「はやぶさ2」は「リュウグウ」の地表で砂を採取するなどの一連のミッションをこなし、2019年11月13日に帰還の途についた。2020年12月5日地球から22万Kmの地点で「リュウグウ」の砂の入った(とされるー現時点では未開封のため)カプセルを切り離し、カプセルは6日未明にオーストラリアの上空で大気圏内に再突入後、南部の砂漠に着陸して無事に回収された。足掛け6年、50億Kmの旅は成功裡に終わった。一方、探査機「はやぶさ2」は軌道を修正して地球に戻らず、そのままさらに11年かけて地球と火星の間にある別の小惑星に向かったという。その飛行距離は100億Km!なんとも気の遠くなるような話だ。
2003年5月に打ち上げられ、2010年6月に帰還した初代「はやぶさ」は、さまざまな困難に遭遇しながらも、それらを克服し満身創痍で地球にたどり着いたというドラマが、国民の共感を呼び大ブームになった。それに引き換え、今回はすべてが計画通りで順調に進んだのでドラマはないように見える。このことは初代の経験と教訓を生かした結果だろう。探査機自体の重要な機器類を二重化して信頼性を高めたことで、トラブルはほとんどなかったのだ。しかし実際には、困難な意思決定を迫られるような事態はあったという。
例えば、リュウグウの予想外に岩だらけで狭い平地への着陸方法を巡っては探査機そのものの損傷を絶対に避けるために、想定されるあらゆる場面をシミュレーションして議論し対策を立て、そのうえで着陸を敢行したのだという。今回はリュウグウ上空の滞在期間が初代の時の3か月と違い1年半と余裕があったこともあって、綿密な計画と意思決定が可能だったのだ。さらに、信頼性が担保されているからこそ安心して3.5億Kmの彼方の探査機に指令を出し、正確に動かすことができたといえる。はやぶさ2の打ち上げ時にJAXAの先生が、「今度はドラマはありません」と述べていたのは、こういったことに自信があったからだろう。初代の時は、ちょうどあの悪夢の政権下で、予算も削られて大きな制約のもとで苦闘していたのだ。
たしかにドラマはなかったが、初代に次ぐ探査機「はやぶさ2」の快挙は、いまコロナ禍に打ちひしがれている日本だけでなく、世界にとっても朗報であったことに違いはないだろう。
(2020.12.06)

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