このページはiPadなどのタブレット端末やPCでご覧ください。
東横線・副都心線直通 その後 2013.04.26
2013年3月16日、東横線が新しい時代に向けて走り出した。これは沿線に住む住民にとってもこれまでにないような大きなインパクトをもたらした。
およそ20年にわたって続けられた大工事によって沿線の様子が徐々に変わりつつあることは目にしていたし、最終的にどのようになるかも知らされてはいた。しかしそれは一般住民にとっては具体的にはあまり想像のできないことだった。ところが”その日”が近づくにつれて、”大変なことが起きる”ことに気付き始めたのである。”渋谷駅がなくなる”という一大事に仰天して、沿線のみならず各地から人々が渋谷駅に押し寄せた。最後の日の終電まで渋谷駅は大混乱した。

そして一夜にして行われた1200人体制による未曾有の切り替え工事で、”その日”が明け、何事もなかったように普通に電車はやってきた。ところがである。見たことも聞いたこともない行き先表示に人々は戸惑った。きのうまでは、渋谷と北千住行きしかなかったのが、「小手指」やら「保谷」やら「森林公園」など一挙に10箇所以上に増えたのだ。だいたい小手指を”こてさし”と読むことさえできないのだ。だが、とりあえずどの電車に乗っても渋谷までは行くことがわかってひとまず安堵した。
一方、新しい渋谷駅では迷子になる人が続出していた。地下5階にある新駅は2008年にすでに副都心線が開業していたので、普段利用している人は問題ないが、東横線の利用者にとってはいきなり地下に放り込まれたのも同然で、電車を降りてエスカレーターでなんとか改札をでたものの、地上への出口が多すぎてわからない。逆に東横線に乗り換えようとしても複雑でホームにたどりつかない。終電間際に駆け込んだがホームが遠くて間に合わない人もいた。

JRや地下鉄も含めて6路線が集まり、日本一わかりづらい駅だった渋谷駅に慣れていた人々は、新たな難儀に見舞われている。なにしろ、ホームが地上2階の旧駅から一挙に地下5階に、しかも200メートルほど東寄りに移動したのだ。JR渋谷駅からは5分以上遠くなり、メトロ銀座線に至っては8階分を上り下りしなければならなくなった。右往左往する乗客たちに新駅では東急職員や警備員が汗だくで対応した。切り替え工事は終電後の4時間足らずで見事にやってのけたが、駅の切り替えはそうスムーズにはいかなかった。しかし考えてみれば、一日42万人の利用者のある駅を一夜にして移動し、朝一番から平常通りに運用するなどというのはあまり例がない。その割には無事に開業できたのは幸いだった。通勤通学客が出てくる翌週の月曜日の混雑が心配されたが、それもなんとか乗り切ったようだ。このような大変化も初めのうちは乗客たちも戸惑うが、それも日が経つにつれて慣れてくるだろう。なにせ利用者の多くが通勤通学のプロの乗客たちなのだから。

新生東横線を象徴するものは、乗り入れ各社の電車たちだ。東急の9000系と1000系2系列の引退と、日比谷線直通廃止による東京メトロ03系の穴を埋めるように、メトロ10000系・7000系、西武6000系・6050系および東武50070系・9000系・9050系の各車両が東急5050系・5000系と横浜高速Y500系に加わった。いろんなスタイルの電車が走るのを見て、渋谷駅に行かずとも「あ、直通したんだな」とわかる。その直通運転の体系は以下のとおりである。
渋谷駅での東横線と副都心線の相互乗り入れによって、すでに副都心線に乗り入れている、東武東上線と西武池袋線および、東横線に乗り入れている横浜高速みなとみらい線も含めた5社5路線による、1都2県にまたがる広域ネットワークができあがった。元町・中華街から森林公園まで89キロ、飯能までは81キロと、かなりの長丁場である。もっとも、すべての電車がこの長い距離を全線走るわけではなく、いくつかの区間運転が行われる。東横線は全線の距離も短く、日比谷線の中目黒-菊名間の区間運転以外はほとんどが全線運転をしていた。しかし東上線と池袋線は50キロを超える長大路線のため、区間運転が多い。今回の直通運転ではそれらが持ち込まれる形になった結果、多様な行き先の電車が走ることになったのである。

その行き先だが、元町・中華街発は、渋谷・新宿三丁目・池袋・和光市・志木・川越市・森林公園・石神井公園・保谷・清瀬・所沢・西武球場前(臨時)・小手指・飯能の14方面を数える。臨時以外のほとんどの列車はこれらの駅から折り返して元町・中華街行きとなる。また、東横線内ではこれまでの日比谷線直通列車を補完する菊名-渋谷間の区間列車がある。

このように多様な直通運転に輪をかけて複雑なのが列車種別だ。東武線と西武線への直通は距離が長いので、速達性を重視して東急とメトロ側では優等列車を充実させた。西武はそれに応えて最速の快速急行を新設し、東急線内特急、メトロ線内急行とあわせて、元町・中華街-飯能間を98分で結ぶことになった。各社の列車種別は異なるので、各接続駅に到着する直前に車両の種別表示を変更している。また東上線内では優等列車扱いではなくすべて普通(各駅停車)となるのも特徴的だ。東上線内では有楽町線も乗り入れているので、地下鉄直通はすべて普通に統一しているのだろう。列車種別はそのほかにも、東急線内急行-メトロ線内通勤急行、東急線内急行-メトロ線内普通-西武線内各停、東急線内急行-メトロ線内普通-西武線内快速急行など、多くの組み合わせがあってきわめて複雑である。

列車編成は8両と10両とが混在しており、各駅の列車発着表示盤やアナウンスでその都度案内している。東武と西武の乗り入れ車両は10両編成車だが、東急とメトロ車は10両と8両、横高車は8両のみの編成となっている。東横線・みなとみらい線内では直通に際して、優等列車の停車駅のみを10両対応のホームに改良した。そのため、東武と西武の車両はつねに優等列車となるが、他3社の車両では10両のほか8両編成車の優等列車も運行している。

東横線・みなとみらい線・副都心線内の1日当たりの運転本数は、平日下り365本、上り361本、土休日下り363本、上り322本となっている。各社車両の内訳は以下の通り。(東急電車時刻表に基づく)
全体 東武車 西武車 メトロ車 東急・横高車
全体 東武直通 西武直通 全体 東武直通 西武直通
平日 下り 365 7 20 101 21 16 237 12 38
上り 361 8 19 101 15 15 233 12 38
土休日 下り 363 12 19 83 13 15 249 8 41
上り 322 12 20 85 12 13 205 8 41

この結果から、東武と西武との相互乗り入れに関しては、メトロおよび東急側の乗り入れ本数が多く、東武と西武の乗り入れがかなり少ないことがわかる。とくに東武車の平日運用は稀少でなかなかお目にかからない。東武車・西武車ともに10両編成に限られているせいなのか、あるいは政策的なものなのか。

■東急線内を走る各社の電車

東京メトロ 10131F 特急西武球場前行き 本来は小手指行き(43S)だが野球開催日のために変更となったと思われる。 2013.03.23

10119F 特急元町・中華街行き(41S) 2013.04.16 この日は副都心線内で車両点検があったため、上下線ともべた遅れとなった。この列車も約15分遅れ。

10132F 特急保谷行き 遅れのため西武車(38M)の代走らしい 2013.04.16 

7130F 各停新宿三丁目行き 8両編成(15S) 2013.03.23

7129F 元住吉駅急行線を通過する急行元町・中華街行き(05S) 2013.03.23

東武9106F 急行渋谷行き(21T) 2013.03.28

東武51074F 通勤特急森林公園行き(17T) 正面を狙ったが、下り電車が被ってやむなく後追いに。。。(画像をマウスでポイントしてください) 2013.03.28

西武6117F 急行小手指行き(36M) 2013.03.28

6105F 特急飯能行き(02M) 飯能までの最速列車 2013.03.23

6155F 急行和光市行き 東急車(51K)の代走と見られる 2013.04.16

元住吉駅の急行線を通過する6107F 特急元町・中華街行き(08M) 2013.03.23

東急4107F 急行和光市行き(51K) 2013.03.28

4105F 特急川越市行き 本来は東武車の運用(17T)だが何等かの理由で東急車による代走だった。ところが翌日も同じくこの車両による代走だったのだ。 2013.03.23

5175F 各停菊名行き(21K) 日比谷線直通廃止にともなう補完の運用 渋谷-菊名間 2013.03.24

4106F  特急元町・中華街行き これも東武車(09T)の代走とみられる 2013.03.23

横浜高速Y515F 各停渋谷行き(01K) 2013.03.28

Y512F 急行和光市行き(28K) 2013.03.23
東横線・副都心線直通運転開始
さらば!日比直
東急9000系の引退
鉄道総合ページ「鉄道少年のなれの果て」