蘊蓄・鉄道コラム
急坂の鉄路

日本は山国であるために山越えする鉄道が多いが、その線路には勾配やカーブがつきものである。昔から鉄道は坂道との闘いだったといってよい。

鋼鉄のレール上を鋼鉄の車輪が転がって進む鉄道は基本的に坂道は苦手である。レールと車輪の接点が狭いため摩擦(粘着力)はきわめて小さいからである。勾配のない平地ではこのことが有利に働き、比較的小さな力でも重いくるまを惰性で長時間転がすことができる。しかし、摩擦が小さいということは滑りやすいということでもある。坂を上がるときは必然的に動輪の回転力を上げるが、その回転力が大きすぎると車輪は空転してしまって前に進めない。そのため、登れる勾配の限界は80‰(パーミル;鉄道の勾配をあらわす単位で、水平に1000m走ったときに稼ぐ高度を示す数値)前後、角度にするとわずか4.57度程度である。これ以上の勾配を上がるにはレールと車輪の粘着力だけでは無理で、補助的な設備を必要とする。線路の中央に敷かれた凹凸のレールに動力輪の歯車をかみ合わせて上るアプト式などが使われる。
現在、日本国内の鉄道における最急勾配は、90‰(角度にすると5.14度)で、大井川鐵道の井川線の「アプトいちしろ駅」と「長島ダム駅」間のアプト区間にある。一方、粘着方式では箱根登山鉄道の80‰が最大である。
このような急勾配の山岳路線を持つ鉄道会社が参加する「全国登山鉄道‰(パーミル)会」という親睦団体がある。参加している鉄道会社は、南海電鉄・神戸電鉄・叡山電鉄・大井川鐵道・箱根登山鉄道・富士急行の6社で、趣旨は「全国の私鉄のうち、観光地が沿線に有り、かつ登山鉄道としての性格を有している鉄道会社(ケーブルカーは除く)が、統一PRやキャンペーン展開などを実施することを目的として結成された」とある。
上記の6社以外にも「急坂の鉄路」はある。JRではかつて信越本線の碓氷峠越えで66.7‰の最急勾配を誇っていたが、北陸新幹線に取って代わられ廃線となった。現在では飯田線にある40‰が最急勾配となっている。因みに北陸新幹線の碓氷峠越えは勾配30‰のトンネルで駆け抜けるが、これは同線の飯山トンネルとともに全国新幹線の中で最大勾配となっている。

これまで、このような線路の勾配に関する記事を作ってきましたが、このほど以下にまとめましたので参照ください。
(2018.08.05)

全国登山鉄道‰会
南海高野線 神戸電鉄 叡山電鉄
大井川鐵道 箱根登山鉄道 富士急行
その他の勾配関連
JR飯田線 近鉄吉野線 碓氷峠鉄道文化むら 篠ノ井線姨捨駅
鉄道総合サイト:「鉄道少年のなれの果て」